スタハマガジン|TOKYO創業ステーション 丸の内 Startup Hub Tokyo

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25歳で“早期退職”。ヘルスケア×デザインで挑戦!全部自分で決められる人生を送りたい

Startup Hub Tokyo(スタハ)を利用して起業した先輩起業家に、起業までの軌跡をインタビューするシリーズ。
今回は、トリプル・リガーズ合同会社 代表の丸山亜由美氏にお話を伺いました。

丸山さんは大学で臨床検査技師の資格取得後、新卒で外資系製薬会社に就職。トップセールスの成績をあげながら受験勉強をし美大入学。その後ビジネスコンテストに複数入賞する実績を経て、卒業後1年で会社を設立しました。
わくわくするようなデザインが少ない医療業界に、デザインやアートの力で新風を吹き込む起業背景には、逆境をプラスに変える行動力がありました。

 

起業家プロフィール

トリプル・リガーズ合同会社 代表 丸山 亜由美氏

2011年北里大学医療検査科卒業後、新卒でロシュ・ダイアグノスティックス株式会社入社。遺伝子研究機器の営業でトップセールスをあげ3年在籍後退職し武蔵野美術大学基礎デザイン科入学。入学当初から起業を決意。在学中ケルン国際デザイン大学に交換留学。2018年3月同大学卒業。同年12月「Tokyo Startup Gateway 2018」(東京都)優秀賞、2019年1月「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019」(経産省)優秀賞。同年3月トリプル・リガーズ合同会社設立(ヘルスケアにおけるデザイン制作事業)

 

20歳で老後を考え、会社を辞め美大入学し起業するまで

起業の原体験・きっかけは?

丸山さん:北里大学の医療検査科に入学して知ったのは、医療業界の現実。AI化が進み、いかに効率よく病気を治すかに焦点が当てられていました。人の手が介在するプロフェッショナルの仕事に憧れていたので、「何か違う」と。一方で、もともとデザインやアートに興味があったこともあり「人生2回あったら美大に行きたい」と思っていました。

そんな頃、20歳で糖尿病を発病。体育会陸上部の短距離選手として走りこむ毎日だったので、「まさか自分が糖尿病?」と。人生これからという時に、私には老後は待っていないかもしれない。やりたいことは、やりたいうちにやろうと強く思うようになりました。
臨床検査技師の資格を取得し新卒で入った製薬会社で、運よく営業でトップセールスに。最も売れたのは、デザイン性の優れた医療機器。デザインのよさが人を引き付けることに可能性を感じました。

在籍していた製薬会社は本当にいい会社でしたが、外資系企業の中で自分は何も決裁権がなく、懇意にしているお客さんにさえ、ある日突然親会社の都合で気に入ってもらった製品が売れない状況になったりします。半年かけてセールスして半年かけて謝罪し続けたり。顧客、業務内容、給与、予定…自分で何も決められない。老後がないかもしれない、当時25歳の私にとっては“早期退職”の気持ちで会社を辞め、武蔵野美術大学に入学しました。

全部自分で決められる人生を送るための起業

起業を意識したのはいつからですか?

丸山さん:美大入学当初から、デザイン性×医療機器の領域で起業したいと思っていました。会社を辞めた時に決意したのは、「全部自分で決められるような人生を送りたい」ということ。何を着て、何時に起き、誰と会い、どんな仕事をして、いくらもらい…それら全てを自分で決められる人生にしたかったんです。

そうなると、起業するしかなかった?

丸山さん:そうなんです。自分の人生を自分で決められるような働き方をしたかった。20歳で糖尿病という、ちょっと面倒なパートナーという病気に出会ってしまった時点から、やろうと思ったことは早いうちにやろうとしています。

スタハでの本格起業準備期間は半年!

スタハを知ったきっかけは?

丸山さん:美大時代に1年間、ドイツの大学に交換留学してデザインを学んでいたのですが、そこで出会った日本人の先輩起業家に、「起業するなら、まずはスタハに登録だよ」と教えてもらって。彼女との日本での再会場所がスタハの打ち合わせテーブルで、その日にメンバー登録しました。

起業までの約1年間、スタハをどのように活用しましたか?

丸山さん:スタハ登録時は、起業は決めてたものの、何から着手すればいいかわからなくて。週1くらいの頻度でコワーキングスペースを利用したり、イベントに何度か参加したり。一番役立ったのは、コンシェルジュ起業相談ですね。起業するまで6回相談しました。定期的に状況を報告して進捗を確認できましたし、一番助かったのは、合同会社の存在を教えてもらったことですね。
日々いろいろな起業家の卵の方と接しているコンシェルジュさんに、「医療とデザイン分野の掛け合わせはすごくユニーク。可能性があると思うからがんばってください。」と言われたことは、背中を押してもらえ自信につながりました。
あとは、スタハの本棚をよく利用しました。水曜の専門家無料相談DAY(※)では、自分に全く専門知識がない法務や財務のことをフォローしてもらい助かりました。
※スタハでの専門家無料相談DAYは終了いたしましたが、専門家相談は引き続き2階Planning Portにて実施しております。詳しくはこちらをご確認ください。

起業に向けて作業するのは、孤独でしたか?

丸山さん:スタハに来ると、私と同じ人がいる感じがして心強かったです。コワーキングスペースで作業していると、近くから打ち合わせをしている声が聞こえてきますよね。それも刺激になりました。

ビジネスコンテストの賞金と逆境をバネに起業へ邁進

起業直前、ビジネスコンテストに挑戦した理由は?

丸山さん:活躍中の先輩起業家は何かしらのビジネスコンテストで入賞している方が多かったので、まずはノミネートされようと。
その考えは、トップセールスを築いた会社員時代に培われた気がします。トップになると、周囲からの目が劇的に変わります。何かで一番になるって、すごく大事。2番、3番では人の印象に残らないと思った時に、「絶対にこのビジネスコンテストで入賞するんだ」と決意。結果、「Tokyo Startup Gateway 2018」(東京都)で優秀賞、「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019」(経産省)のアイデアコンテスト部門で優秀賞をいただくことができました。ここでの賞金を元手に、翌月法人登記することができました。

本格的な起業準備期間は若干半年。そのエネルギーはどこから?

丸山さん:振り返ってみると、自分は一見マイナスなことがパワーをくれる性質。美大の卒業制作提出日当日に闘病中の父親が亡くなり、母との生活のためにも、自分が稼げる人になる覚悟が生まれ、起業に向けてお尻に火が着きました。20歳で糖尿病になったことも、今の起業につながっています。

現在のヘルスケア、アート・デザインに加え、3つ目の“リガーズ”として、ガストロノミーで第二創業する展望だ
(トリプル・リガーズ 会社概要より)

第二創業を視野に3つ目のコアに挑戦中

今後のビジョンは?

丸山さん:現在はヘルスケア領域のクライアントさまを中心に、アプリのUI/UXデザインやロゴ・ポスターなどのグラフィックデザインを制作していますが、事業計画書には、2年後にイタリア⾷科学⼤学でガストロノミーの学位を取得して、⾷べて健康になる独⾃のサービスで第⼆創業することを掲げています。私、⼤学という存在を心から愛しておりまして(笑)。社名の「トリプル・リガーズ」は、ヘルスケア、デザイン・アート、ガストロノミーの3つの“学位”を意味していて、会社のロゴも⼤学のエンブレムを想起させるデザインにしました。今はまだダブル・リガーズ。これから3つ⽬に挑戦します。

ヘルスケアデザインの領域以外に、食で第二創業を目指す理由は?

丸山さん:デザインとは色彩や造形を通じて、サービスやプロダクトにレバレッジを掛けることができる魔法だと思っています。今はクライアント企業の製品をデザインしていますが、いつか私自身もコアになるオリジナルの技術や商材を持ちたい。そう考えたときに、好きな分野かつ努力すれば習得できそうだと感じたのが食科学の領域だったんです。⼤好きな⼤学で学んだ知識を事業や社会に還元し、コモデティ化しないサービスを世に出し続けられたらと思っています。⻑⽣きしたいです!