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知らないとヘタを打つ!? C向けマッチングサービスの心得8選!

3/9イベント「C向けマッチングビジネスの心得」バナー

3/9イベント「C向けマッチングビジネスの心得」

「課題を解決したい人」と「商品・サービスを提供したい人」。
マッチングビジネスとは、この両者をつなげることで手数料を得るビジネスモデルのことをいいます。今回ご紹介するイベントは、そんなマッチングビジネスの「CtoC」にスポットライトを当てたもの。それでは3/9に開催した連続起業家に学ぶ!C向けマッチングビジネスの心得のイベントレポートをどうぞ!

池森 裕毅氏

池森 裕毅氏 (株式会社tsam 代表取締役 / 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授)

1980年、千葉県生まれ。東京理科大学を中退後、起業。2005年、2011年、2019年、2020年にIT企業を設立し、うち二社は売却に成功。現在は株式会社tsamにてスタートアップの支援を行う。業務の一環として、複数のアクセラレーションプログラムにてメンターを、情報経営イノベーション専門職大学にて客員教授を務める。他、起業家コミュニティの運営など。

まずはCtoCマッチングビジネスの基本を知ろう!

CtoC向けのマッチングサービスとは、どのようなものでしょうか?
講師の池森裕毅先生いわく、その定義は人それぞれだとか。あくまで1つの定義として教えてくれたのはコチラ。 

 ユーザー同士がお互いのスキルや所有物をトレードするプラットフォーム

身近なサービスだと「メルカリ」「クラウドワークス」「ココナラ」などが挙げられ、いまや代表的なビジネスモデルとなっているC向けマッチングサービス。その特徴とはどのようなものか?池森先生いわく、特徴は3つあるそうです。 

①課題が身近にある

②ビジネスモデルが分かりやすい

③参入障壁が低い 

池森先生「例えばあなたが美容師だったとしたら、『コロナの影響でお客さんが少なくなった』『新規客が欲しい』といった課題がすぐに分かります。このすぐに分かるというのがポイント。その職業の人であれば目の前にある課題がすぐに分かる、これが1つ目の特徴です。2つ目は、買い手と売り手の商取引をマッチングさせ、そこから手数料を得るというシンプルなモデルということ。3つ目は、スキルも学歴も資格もいらず、お金もほとんどかからないので始めようと思えばすぐに始められるところ。つまりCtoCマッチングサービスというのは、イメージがしやすい。だから雨後の筍のように似たようなマッチングサービスがポコポコ出てきている現状です。」

 CtoCマッチングサービスは大きく分けて2つあり!
  • 全ジャンル対応型(ココナラ、タイムチケットなど)
  • ジャンル特化型(カメラ、エステなど) 

池森先生「いろんなジャンルに対応した全ジャンル対応型と、カメラのマッチングしかできない、エステのマッチングしかできないといったジャンル特化型の2種類です。」 

ここまでがCtoCマッチングサービスの基本編でした。次からはいよいよマッチングビジネスの心得となる本題に入ります。池森先生いわく、CtoCマッチングサービスをやる上で気にするポイントは8つあるそうです。(下記資料参照)

講義資料キャプチャ1


池森先生
これら8つは、非常に注意して事業を起こさなきゃいけないポイントです。ここを深掘りせずに事業を立ち上げてもなかなか上手くいかない。このイベントでは、この8つを掘り下げていきます。」 

気にするポイント①先行優位性

池森先生「マッチング系、特にスキルシェアリングは非常に先行優位性が働くモデルです。なぜかというと、誰かにお金を払うとき、素性の知らない人にはなかなかお金を出せないものですよね?そのときに必要になるのが信用の可視化で、レビューや評価制度というもの。レビューが100個あり、評価も高ければ信用できるなとお金を払いますし、逆にレビューや評価がなければ払いません。つまり、取引するにはレビューが必要で、レビューを集めるには取引が必要。要は、先行のプラットフォームほどレビューは貯まり、後発のプラットフォームほどレビューが貯まりにくく、取引が生まれない。これが信用の可視化というもので、CtoCマッチングサービスで先行優位性が効くポイントになります。ただし、レビューや評価制度も客観的に分かる実績があればカバーできます。デザイナーなら賞を獲った、翻訳家ならTOEIC満点などの実績があればレビューはいりません。そういった分野なら後発のプラットフォームでも取引しやすくなります。」 

気にするポイント②転換率

池森先生「転換率とは、“買い手が売り手になり”“売り手が買い手になる”という、転換の率をいいます。マッチングビジネスはこの転換率をいかに上げるかが勝負になってくるので、かなり意識しなければならない。ただし、マッチングビジネスには転換率のあるモデルとないモデルがあります。転換率のあるモデルというのは、例えばスニーカーの売買サイト。スニーカーを買う側は時として不要なスニーカーを売り、スニーカーを売る側も時として買うため転換率が高い。逆に転換率のないモデルというのは、例えばカメラ。カメラマンは撮ってもらう側にならず、撮影希望者もカメラマン側にならなくて転換率がない。こうした転換率のある・ないで変わってくるのがプロモーションです。転換率のあるモデルは1方向にプロモーションするだけなので楽です。スニーカー売買であればスニーカー好きにプロモーションすればいい。しかしカメラの場合は、カメラマンと撮影希望者、このどちらにもプロモーションを仕掛けなければならない。つまり2方向からプロモーションをやる必要があり、効率が悪く、ビジネスの成長曲線が劣ってしまう。」 

気にするポイント③ビジネスドライバー

池森先生「自分の事業が成長するには、どんな要素がいるのかというビジネスドライバーを見極めることが重要です。それは買い手の確保売り手の確保、またコミュニティブランディングというケースもあります。それでは、車の中古売買マッチングサービスの場合、ビジネスドライバーは何になると思いますか?答えは買い手や売り手の確保じゃなく、どのパーツがどのパーツに互換して組み合わせられるかというパーツ交互性のデータベースです。次にエステのマッチングサービスを考えてみましょう。売り手側のエステティシャンはお客さんが欲しいので簡単に集められ、『エスティシャンがたくさん集まった!このビジネスうまくいく!』と思いますがこれは早合点。安易に集められる方より、買い手であるリッチなお客さんをいかに確保するかが重要です。自分の事業はどのポイントがビジネスドライバーで、どこにアセット(利点・強み)を貯めるべきか把握しておきましょう。」 

気にするポイント④テイクレート

池森先生「ここでは手数料のレートについて話します。マッチングサービスの手数料はだいたい20~30%程度になりますが、ここにいかにハンズオン*1してテイクレートを上げられるかが鍵になります。ただし、なんでもかんでもハンズオンしてやればいいという訳じゃありません。例えば、100万の商品取引が月10件あるという高単価少頻度の取引には、超ハンズオンしてテイクレートを上げ、ガッツリ回収します。逆に飛ぶように売れる2,000円の商品取引にいちいちハンズオンしていると単価が安いので割に合いません。こういった低単価高頻度の場合はハンズオフ*2して低テイクレートにし、運営コストを下げて自走モデルにする。尚、低単価高頻度はテイクレートを上げられないので、アップセル*3やクロスセル*4でいかに単価を上げるかが勝負になります。」

気にするポイント⑤ネットワーク効果

池森先生「マッチングサービスはネットワーク効果*5が高いです。プラットフォームに人が集まれば集まるほど利用者の便益は増えるし、人というのはみんなの集まるところに行く。つまり分散型でなく一極独占型に近い。このときにネットワーク効果が働くので、いかにバイラル係数*6を上げられるかが鍵になります。このバイラル係数を上げるには、他人を巻き込むグロースハック*7の仕組みを入れられるかどうかにあります。」 

気にするポイント⑥トランザクション発生率

池森先生「トランザクション、すなわち取引について説明します。取引が発生するにはいくつかの要素があります。それは時×場所×ニーズ×頻度などの掛け軸。このどれか一つでも制約があると発生率がガクンと落ちます。例えば、体の疲れている北海道住民が、沖縄のマッサージ師に仕事を依頼したくても沖縄から来てもらうわけにいかないので時と場所の制約がかかります。しかし、北海道住民が沖縄のデザイナーにバナー制作を頼んだとしたら、バナーはいつ・どこにいても作れるのだから時と場所の制約はかかりません。次は掛け軸のニーズについて。例えばジャンル特化型のマッサージだと、そのマッチングサービスのプラットフォームには疲れている人しか来ないのでマッチングしやすい。しかし全ジャンル対応型だとニーズが絞れていないのでマッチングしづらいです。掛け軸の頻度については、漁師と漁船売買サイトを例にします。漁船は10年に1度くらいの頻度でしか買い換えません。例えば、千葉県にいる漁師が10年に1回漁船を欲しがり、そのタイミングで千葉県にいる10年に1回漁船を売りたい人がいたとします。この2人が、その日その時その場所で売買サイトを見ないと取引は発生しません。だが、これが漁船じゃなく毎日売買するようなリンゴやバナナであれば、毎日サイトを見るので取引が発生しやすい。トランザクションを発生させたければ、前述4つの掛け軸の制約は解除するべきです。」 

気にするポイント⑦市場規模

池森先生「マッチングアプリを作りたいと思ったら、どれくらいの市場規模があって、どれくらいの収益になるか、そろばんを弾いてみるべきです。市場規模は単価×頻度×ユーザー数で決まります。例えば、単価が8,000円の商材で1日5回取引があり、手数料が25%だったとしたら、月の売上はいくらになるか?」

講義資料キャプチャ2


池森先生
「答えは30万円です。1日5回の取引があるプラットフォームは、けっこう流行っていると思いますが、それでも30万円の利益にしかならない。これが単価3,000円で1日3回の取引になれば、もっともっと売り上げが減ってしまう。こうやって一度そろばんを弾き、冷静になりましょう。『これではとてもやっていけない!』と思えば、プラスの戦略を考えなければいけないことに気づけます。」
 

気にするポイント⑧パワーバランス

池森先生「お金が介在する以上、強い方と弱い方の立場があります。大半はお金を出す買い手側が強いですが、売り手側がレアで貴重な存在であれば例外。介護士や家政婦、ペットシッターといった、職業自体の数が少なくて貴重な存在のときには、売り手側のパワーバランスが強くなります。この場合は、売り手の時給を高くし、手数料は買い手が負担するという売り手ファーストの設計にしましょう。こういったパワーバランスを意識してやっていくと良いです。」 

以上が、CtoCマッチングサービスにおける気にするポイント8つでした。
基礎的なことから気にするべき注意点までと幅広い内容になった「C向けマッチングビジネスの心得」、いかがでしたか?
イベントレポートの最後は、池森先生からいただいたエールで締めくくろうと思います。 

池森先生「マッチングサービスはイメージしやすく、挑戦する人は後を絶ちません。イメージしやすいからこそパッと作ってしまいますが、大半の人はこれまで話した8つのポイントを意識しないまま立上げてしまいます。このイベントをきっかけに、きちんとそろばんを弾いて冷静にビジネスを深掘りしていきましょう。ウォームハート、クールヘッドというものです。暖かいマインドを持ち、冷静な頭脳でビジネスを起こしていきましょう!」

 

\イベントをチェックしたい方はこちら/

startup-station.jp

 

*1:ハンズオンとは、運営側がサポートしてマッチングの可能性を上げること。

*2:ハンズオフは、運営側が介入せず会員同士で自然にマッチングする状態。

*3:アップセルとは、より高額なモデルの商品を勧める手法。

*4:クロスセルとは、関連商品をセットにして勧める手法。

*5:ネットワーク効果とは、顧客が増えれば増えるほど、ネットワークの価値が高まり、顧客にとっての便益が増えていくことを指します。

*6:バイラル係数とは、サービスの拡散度合いを測定する指標です。

*7:グロースハックとは、サービス自体の機能、設計、戦略にまで改善を加えて、サービスの成長を飛躍させることをいいます。