スタハマガジン|TOKYO創業ステーション 丸の内 Startup Hub Tokyo

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人と保護動物はバディになれる!“ ワンヘルス ” を社会実装へ

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Startup Hub Tokyo(スタハ)を利用して起業した先輩起業家に、起業までの軌跡をインタビューするシリーズ。
今回は、獣医師で株式会社 Buddies 代表 寺田かなえ氏にお話を伺いました。

起業家プロフィール

株式会社 Buddies 代表 寺田 かなえ氏

都内で臨床獣医師として勤務。2020 年『Buddies』を立ち上げる。Startup Hub Tokyo 主催「Global Inovation College 2019」ファイナリスト。第 6 回女性起業チャレンジ制度グランプリ。
【URL】https://buddies.life/rescued-dogs/

 

獣医師として勤務する寺田さんが「Buddies」を立ち上げた理由は?

寺田さん:「今、国内で殺処分されている犬猫の数は公表数に含まれていない引き取り屋による殺処分数なども含めると年間10 万匹以上と予想されます。生きたくても生きられない動物たちがこれほどいる一方で、特に都市部などでは、犬を飼いたくても飼えないという方が多くおり、そこをマッチングできないかと保護犬の “ 犬材派遣会社 ”を立ち上げました。

このサービスでは、私が獣医師としてメディカルメンテナンスを行い提携トレーナーさんによる協力を経て要望を頂いた施設などに派遣しているほか、個人向けに犬がいるワーキングスペースの提供や各種イベントの実施も企画しています。レンタルサービスとは趣旨が異なり、私たちが目指しているのは、保護犬には譲渡か殺処分以外の新しい生き方を、犬好きの人にはもっとカラフルな毎日を提供することです。

社名の “ バディーズ ”も犬と人が互いにバディーになってほしいという願いからつけたもの。保護犬と日々触れ合う場を提供することで、保護犬には社会化の機会を促進し、利用者の方には犬に関する知識や犬との共生における責任感を醸成していただくことも期待しています。当社のサービス利用を通じて相性の良い子と出会った利用者の方が実際に里親になるケースも出てくると思います。譲渡会以外にもこのような保護犬との出会いの場が日常にあってもいいのではと思います」

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今後、加わる“犬材”のモデル犬として活躍中の保護犬くま(手前)とビー(後ろ)。くまは取材にも大乗り気の陽キャ系、ビーは少しシャイなツンデレ系

保護活動を事業化した理由とは

寺田さん:「まず、事業化することで、よりオープンな形で多くの人にアプローチできるということ。また事業として収益を出すことで寄付などに頼らず活動を持続させること。さらに“人と動物と環境がともに健康であることが大切 ”という“ワンヘルス”の概念のもと、ともに助け合うことでより持続可能で可能性が広がる共存システムができるのではと考えています。実際に人だけでなく犬も人と触れ合うことでストレス値が下がるという研究論文もあり、当社でもそれぞれの犬の個性に合わせストレスにならない派遣先や派遣の形を整えています」

寺田さんにとってこの事業を獣医との複業で行う意義とは

寺田さん:「保護動物をサポートする事業を行う上で、獣医師としての知識や経験はもちろん役に立っていますし、反対に獣医師としての学びをこの事業から得ることも多いです。ただ自分がもつ時間や体力などのことも考慮して、二兎を追う者は一兎をも得ずにならないよう心がけています。パラレルで起業するなら、直接的な関りは無くても何かしら相乗効果を狙える組み合わせがいいと思います」

獣医師として日々、動物を助ける寺田さんが獣医の仕事とは別に保護活動に背景とは

寺田さん:「私の、動物まみれライフは生まれた瞬間に始まりました。両親が私を妊娠中、妊婦検診の待ち時間に町を歩いていて捨て犬を見つけ、その子をフラッと連れて帰ったんです。名前を“くう”というんですが、私はくうを“お姉ちゃんだよ”と教えられて一緒に育ちました。両親は放任主義だったので、私が泣いているときは必ず“姉”が慰めてくれ、初めてのお使いも彼女と一緒。何をするのも一緒にいるのが当たり前でした。獣医になりたいと思ったのも彼女の病気を治したいという思いからです。少し大きくなって、くうの背景を知り、保護犬たちのためになにかできないかと思うようになりました。獣医になりたいというのは小さなころから思っていましたが、私にとって獣医師になることは目的ではなく、保護動物をサポートするための手段でした。

大学を卒業し、動物病院で働き始めたのですが、そこで助けられるのはみんな愛され、心配されて病院に連れてきてもらった子たち。私はやはり、人にケアされている動物たちではなく、人によって不利な状況に置かれている保護動物や野生動物のために働く仕事がしたいと思い、一度、動物病院を辞めてアフリカに行きました。直接、野生動物に携わる仕事ではなかったんですが、野生動物に囲まれながらしばらく働いていました。しかしそんな環境でも、ふと気がつくと野良犬や野良猫に目が行ってしまうんです。アフリカに来てまで私はこの子たちが気になるんだと気づきました。野良犬・野良猫のためにできることを、まずは日本で始めよう、とそこで初めて起業を意識しました。

日本に戻り起業に関するセミナーやプログラムを受けたのですが最初は事業化してやっていけるのかという確信はありませんでした。とにかく反応が正反対に分かれていて…。でもいくつかのピッチコンテストで賞を頂き、アメリカ・デンバーに海外研修にも行くことができました。現地のピッチでものすごく熱い反応を得たことで、世界的に意識されている課題なのだと改めて気づきました。私としてはビジネスとして成功することを目的に始めたのではなく、ビジネスとして行うことで実際に保護動物の環境を変えられるか挑戦したいという段階です。ビジネスコンテストで優勝できたことで、ビジネスのプロにも評価されたということが、大きな後押しになりました」

 

取材:TOKYO HEADLINE