起業して事業を軌道に乗せるまでにはさまざまな課題があります。中でも1番の課題は「新規顧客の獲得」ではないでしょうか。
そこで注目してほしいのが、経費をかけず顧客獲得に即効性があるとされるWeb広告のひとつ「リスティング広告」です。
ただし「正しい手順と考え方を知らないと必ず失敗する」と、株式会社ウィニングフィールド代表取締役の勝原潤氏は言います。
勝原先生は、ネット広告のプロフェッショナル資格を多数持ち、通算250回以上のセミナーを開催してきた、Webマーケティングのスペシャリスト。
リスティング広告の始め⽅から重要ポイントまで、実践的な内容の本格講義の様子をレポートします。
講師
勝原 潤⽒(株式会社ウィニングフィールド 代表取締役)
富⼭県出⾝。⼤学卒業後、複合機・通信商材の営業代⾏のベンチャー会社にて⾃⾝が統括する部署が2004年度⽇本テレコム『おとくライン』、YahooADSL 新規顧客獲得・契約本数グループ1位の記録を打ち⽴てる。その後ダンス系エンターテイメント会社にて雑誌の編集・広告担当として⼊社。営業部⻑〜編集⻑代⾏〜副社⻑と経る。商品プロモーションのプランニング、販売促進、キャスティング業務、 イベントの企画・制作・運営や全国規模のオーディションの企画・主催、海外のイベントやフェス開催など様々な広告やプロモーション事業に携わる。また、外資系広告代理店のデジタルマーケティング部に在籍し、⼤⼿グローバルIT企業の広告運⽤チーム在籍、主に運⽤型広告やWEBマーケティング業務に携わる。様々な企業・店舗の広告提案やプロモーション案件、 広告運⽤に関わり、集客や売上に貢献 してきた実績を元に起業。多数のネットの広告プロフェッショナル資格を元に現在は中⼩企業・店舗を中⼼にWEBマーケティングやWEB広告を使ったWEBコンサルティングと物販、WEB広告に関する講座などを展開中。
◆資格
・Yahoo!プロモーション広告プロフェッショナル認定資格(ベーシック【基礎】、アドバンスト【運⽤・上級】両取得)
・GoogleAdwords認定試験合格(基礎・検索連動型広告、ディスプレイ広告)
・グーグルパートナー認定資格(セールスパートナー)保持
- 講師
- 起業時の最初の課題とは?
- 無料のWeb制作ツールでHPやLPの充実を!
- 集客の種類や手段を知ろう
- オンライン集客を知らないと生き残れない
- 誰でも簡単に出せるWeb広告
- 小資金で高いパフォーマンスの「リスティング広告」
- 仕組みから配信方法まで
- 最適な広告費の算出方法は?
起業時の最初の課題とは?
起業には、資金調達や在庫管理、社員の採用、新規顧客の獲得など、乗り越えるべきさまざまなハードルがあります。
勝原先生は「今は資金が少なくても独立できるし、在庫をかかえないシステムを構築することも可能な時代です。しかし新規顧客の獲得だけはハードルが高いままです」と言います。
そこで注目されているのがリスティング広告です。
リスティング広告とは、GoogleやYahoo!などの検索結果に表示される広告のことで、もともと興味があって検索しているユーザーへの広告配信のため、他のWeb広告に比べてCV(コンバージョン/顧客情報の獲得や成約など最終的な成果)の確率が高いのが特徴です。
ところが「勘違いしている人が97%ぐらい。正しい手順と考え方を知らないと必ずといっていいほど失敗します。」と勝原先生は忠告します。
ビジネスのほとんどの悩みは「売れない」「集まらない」「儲からない」の3つに集約されるそうです。逆を言えばこの3つが解決すればビジネスはうまく回るわけです。
勝原先生は、まず、売上(店舗)の算出式を説明しました。
「利用客数」×「客単価」×「購入率」=「売上」
これをWebに置き換えると以下のようになり、この大前提を知っておく事が大切です。
「アクセス数」×「客単価」×「成約数」=「売上」
さらにWebの場合、以下の方程式にまとめられます。
「集客数(フロント)」 × 「成約率(受け皿)」
リスティング広告が担うのは「集客数(フロント)」の部分で、「受け皿」になるのがHP(ホームページ)やLP(ランディングページ)と呼ばれるサイト部分で、商品購入や申込み、資料請求などの仕組みを作ることになります。
しかし、受け皿であるHPやLPが見にくい、分かりにくい、使いにくい穴だらけのザルのようなサイトだと、どんなにお金をかけてアクセスを流しても成約に至りません。
つまり、受け皿であるサイトの現状を把握・改善し、しっかりと作る必要があります。
無料のWeb制作ツールでHPやLPの充実を!
では、受け皿はどうすれば作れるのでしょう?
勝原先生は「時代は変わっています。お金をかければいいものができるという次元ではなくなってきています。」と話します。
勝原先生「よくHPとLPの違いを聞かれるので、まずその説明をします。
HPは企業や団体の信頼性を伝えるためのページで、安心、信頼してもらうのが目的です。
一方、LPは成約してもらうためのサイト。そもそも目的が違うので作り方も違います。どちらも持っておくのがベターだと思います。」
このサイト制作は、昔は外注してお金もかかっていましたが、今は自分で簡単に作れる時代だとか。
勝原先生「LP制作ツールの【ペライチ】や【WiX】、【Strikingly(ストライキングリー)】、バナー制作なら【Canva(キャンバ)】など、無料の制作ツールが続々と登場しており高い外注費をかけなくても個人で簡単に作れるようになりました。
こういった無料ツールで、まずHPやLPを作り、いよいよ集客に力を入れることになります。」
集客の種類や手段を知ろう
勝原先生は、集客の種類や手段と目的を知っておくのも重要とし、図を共有しながら説明しました。
藤原先生「無料でオフラインなら口コミやチラシの手配り、取材をしてもらうなどでしょうか。有料でオフラインなら折り込みチラシやポスティングがあります。無料でオンラインなら、ブログを活用する人も多いでしょう。
noteとかYouTube、TwitterやLINEなどのSNSで情報発信するやり方もあります。ただし、フォロワーやチャンネル登録者を集めなければならず時間と労力がかかります。」
オンラインで有料なのがWeb広告ですが、注目したいのはWeb広告を出す場合、以前なら広告代理店などに依頼しなければならず、さらに最低出稿金額が決められていたことです。今では誰でも少額でWeb広告が出せる時代に変わってきたそうです。
勝原先生「起業するのに有利な時代です。でも販促の順序を間違えて失敗するケースが多いのが残念。僕からの集客アドバイスは、初動はWeb広告で軌道に乗せながら、時間がかかるSEOやSNSは中長期施策としてやるのが鉄板です。」
オンライン集客を知らないと生き残れない
インターネット広告市場は年々10%以上の伸び率で成長し2019年にはテレビ、新聞、雑誌、ラジオの4大マスメディアを抜いて日本最大の市場規模となりました。
いまやインターネット広告の反響は大きく、ここ1~2年はコロナ禍もあってオフライン事業の売上は高いがオンラインに疎いレガシー産業と呼ばれる会社が淘汰されたと感じる方は少なくないでしょう。
「オンラインでの集客を知らないと生き残れない」と勝原先生も断言します。
そして、このオンライン集客には以下の3つの手段があります。
- PPC:Pay Per Click(ペイパークリック)の略。クリックごとに広告費が発生する仕組みでWeb広告全般。
- メリット:即効性とマーケティングリサーチが強み。どのキーワードや画像、広告文で成約したかなど、ユーザーニーズがデータで出るため効果が分かりやすい。それを参考にサイト改善や商品やサービスそのものをユーザーニーズに寄せるなどの施策ができる。
- デメリット:お金がかかるため、費用対効果を考えることが重要。
- SEO:Search Engine Optimizationの略で、Google、Yahoo!で自然検索して上位表示させる施策。
- メリット:資金がかからない。
- デメリット:効果が出るまでに時間がかかる。ブログやnoteを毎日、毎日、投稿して上位に表示されるようにしなければならない。反映されるまでには最低、半年ぐらいは見る必要がある。
- SNS:Twitter、LINE、Instagram、YouTubeなど、自身の情報を発信できるツール。
- メリット:資金がかからない。ファンがついてからが勝負で、拡散されればたくさんのリーチとアクセスが生まれる。
- デメリット:自身をブランディングするために、毎日、投稿を発信して質を高めないとファンがつかない。
勝原先生「Web広告といいますが、広告というよりマーケティングリサーチに近いです。ユーザーのニーズに寄り添うため広告を打ち続け、分かった情報を基にサイトを修正・改善し、商品・サービスをニーズに寄せていくと思ってください。
サイトが使いやすくなってから、SEOによる上位表示をすれば、自然検索でアクセスが集まり、成約に至りやすくなります。
その後は横拡散のSNSでどんどん拡散させていくというのが集客のロジックです。」
誰でも簡単に出せるWeb広告
Google広告、Yahoo!広告、Facebook広告、YouTube広告、Twitter広告など、たくさんあるWeb広告は、クレジットカードさえあれば誰でも簡単に出稿できますが、その違いを知って出稿することが大切です。
勝原先生「SNSユーザーはサービスを利用したいわけではないので、SNS広告はユーザーの熱量を引き上げたり、潜在ニーズに気づかせるような広告が必要です。
一方、リスティング広告は検索連動型広告と呼ばれるように、ユーザーが検索した結果で表示するためシンプルで分かりやすい事が肝心です。」
もう一つ知っておいてほしいことは、どの市場にも①低関心層、②潜在層、③顕在層、④顧客層の4つの属性がありアプローチが違うことです。
勝原先生「低関心層はバナー広告で認知を、潜在層はディスプレイ広告やSNS広告で認知&熱量を高めてもらいます。顕在層は目的が顕在化しているので検索連動型広告との相性がいいです。
最後の顧客層はリマーケティング広告といって、メール広告やLINEなどリピートを促進するような広告が有効手段です。」
小資金で高いパフォーマンスの「リスティング広告」
マーケティングの考えでは、前述の顕在層へのアプローチが小資金で高いパフォーマンスを出せるとされています。
顕在層に向いているリスティング広告は、大きく分けてGoogleとYahoo!に分離されます。ただYahoo!の検索ロジックはGoogleの検索を借りているものなのでGoogle広告を理解するのが近道だとか。
勝原先生「4~5年ぐらい前に、Web広告がガラッと変わった出来事がありました。それはAI(人工知能)による機械学習が追加されたことです。
10年くらい前のWeb広告運用は、パソコン画面にはりついてキーワードを入稿したり、入札単価を上げ下げするため家にも帰れず、それこそパソコンと飲食を共にするような時代でした。
それがAI登場で出稿も出稿後もぐ~んと楽になりました。機械学習がうまく進めば、簡単に言うと購入してくれそうな人にしか広告を出さなくなります。
自分で学習しながら広告を出してくれるのが昨今のリスティング広告なのです。」
成約につながりやすい顕在層ですが、割合は全体の13%に過ぎません。
勝原先生「釣りに例えると、お腹のすいた魚がいる釣り堀に糸を垂らす行為がリスティング広告です。簡単に釣れるけど競合も多い。だからエサを大きくしたり竿を太くしたり、お金を使ってようやく熱量の高いユーザーを獲得できます。
これが60%も占める潜在層だと、Facebookやインスタグラム、SNS広告が向いています。こちらは太平洋に魚群探知機を持って船を出すような感覚でしょうか。労力はかかるけど見つければ総取りできる可能性を秘めています。」
さて、クリックされなければお金はかからないリスティング広告は、少ない資本でトライアルできるところがオススメポイントですが、他にも勧めたい理由があるそうです。
勝原先生「最近のGoogle広告は本当に優秀で頼もしい!次は、その仕組みを簡単に紹介します。」
仕組みから配信方法まで
勝原先生は、実際の画面(イメージ)を見せながらGoogle広告のフォーマットや種類、仕組みから配信方法についても解説してくれました。
「最近のGoogle広告は想像を絶するほど賢い!」と言う勝原先生。たとえばサイトのURLを入れるとGoogleが最適なキーワードや広告文を考えて提案してくれるので、自分であれこれ考える必要がないそうです。
勝原先生「レスポンシブ広告といって、見出し10個、説明文4つを事前に入力しておくと、Googleが組み合わせて広告を出してくれるというものもあります。
最適な組み合わせを導き出して、反応のいい広告はどんどん出してくれます。配信方法も、サイトを訪れた人だけとか、男性だけ、旅行好きだけといった限定配信も可能です。」
最適な広告費の算出方法は?
リスティング広告の事例などを紹介後、最後に“ウィニングフィールド式”の広告費算出方法を伝授してくれました。
勝原先生「意外と広告費の予算がわからないという方は多いものです。算出方法は顧客単価から逆算して割り出すと良いです。
客単価(継続率含む:LTV顧客生涯価値)× Web販促費率(5~10%)=1件あたりの適正顧客獲得単価
たとえばスクールビジネスをしている場合、月額料金(月謝)が10,000円で1年通ってくれたとしたら、売上10,000円×12ヶ月(1年)=120,000円が、1人がもたらす売上です。
これを式にあてはめて、120,000円×0.05=6,000円。同じく120,000円×0.1=12,000円となります。
つまり6,000円~12,000円がWebでかけられる1件あたりの顧客獲得単価と割り出せます。
さらに、月に5~10件の成約が欲しいなら6,000円~12,000円×5~10件ですから、30,000円~120,000円の月額広告費を用意する必要があると算出できます。あくまでざっくりとした算出方法ですが参考になると思います。」
ご自身の体験と豊富な知識を基に、実践的な講義をしてくださった勝原先生。
「今日のセミナーでリスティング広告は難しそうとか、お金がかかりそうというイメージが払拭されると嬉しいです。
Googleアカウントをお持ちなら、一度挑戦して成果に結びつけてください。」とエールを送ってくれました。
以上、イベントレポートをお届けしました。
構成・文/馬渕智子
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