スタハマガジン|TOKYO創業ステーション 丸の内 Startup Hub Tokyo

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【TOKYO創業ステーション8周年イベント】 挑戦を加速させる!成功をつかむ起業家の条件とは

TOKYO創業ステーション開設8周年を記念して、2025年3月10日(月)、特別イベントが開催されました。

当日は、多方面で活躍する一木広治氏(株式会社ヘッドライン 代表取締役社長)がモデレーターを務め、これから起業を目指す方々に向けて、第一線で活躍する起業家たちが自身のリアルな経験や乗り越えてきた壁について語る2部構成のトークセッションが行われました。

「起業に興味はあるけれど、実際に一歩を踏み出すのはちょっと怖い――」

そんな起業初期の想いに寄り添いながら、等身大のストーリーと熱量のこもったメッセージが届けられたイベントの様子をレポートします!

モデレーター(第1部/第2部)紹介

一木 広治氏
株式会社ヘッドライン 代表取締役社長 / 早稲田大学研究院 客員教授

一級建築士の顔を持ち、『一般財団法人ピースコミュニケーション財団』代表理事、『二十一世紀倶楽部』『ライオンズ日本財団』『一般社団法人Empower Children』の理事をつとめており早稲田大学グローバル科学知融合研究所副所長・研究院客員教授、大阪大学特別招聘教授、『国連を支える世界こども未来会議』発起人・総合プロデューサー。『株式会社LDH JAPAN』顧問エグゼクティブプロデューサー、他『株式会社チヨダ』『株式会社USEN-NEXT HOLDINGS』『株式会社フォーシーズ』『株式会社プロラボホールディングス』『nugu』などをはじめ多数の企業、イベントの顧問を務める。

第1部 起業の道を拓く覚悟!起業家の突破力に迫る!

第1部では、上場を果たしたスタートアップ企業の創業者である重松大輔氏(株式会社スペースマーケット 代表取締役社長)にご登壇いただき、自身のこれまでの挑戦を振り返りながら、「起業家に必要な突破力」についてお聞きしました。

登壇者紹介

重松 大輔氏
株式会社スペースマーケット 代表取締役社長)

1976年千葉県生まれ。千葉東高校、早稲田大学法学部卒。2000年、東日本電信電話(株)入社。主に法人営業企画、プロモーション等を担当。2006年、(株)フォトクリエイトに参画。一貫して新規事業、広報、採用に従事。国内外企業とのアライアンス実績多数。2013年7月、同社にて東証マザーズ上場を経験。 2014年1月、(株)スペースマーケットを創業。2016年1月、シェアリングエコノミーの普及と業界の健全な発展を目指すシェアリングエコノミー協会を設立し代表理事(現在、理事)に就任。

大企業からスタートアップ社員、そして起業へ

新卒でNTT東日本に就職し、その後スタートアップ企業の社員として東証上場を経験。2014年に株式会社スペースマーケットを立ち上げた重松氏に、当時の就職人気ランキング上位を誇っていた大企業からスタートアップ企業へ転職することになったきっかけを伺います。

重松氏「元・半官半民の大企業に就職しましたが、働いている人のモチベーションが『働くことの面白さ』よりも『昇進』や『安定』に置かれていて、自分には合わないと思うようになりました。そんな時、起業した友人や、当時盛り上がっていたスタートアップ界隈の友人たちから転職のお声がけをいただくようになりました。先の見える人生よりも先の見えない人生を選びたいという想いで、ビジネスに共感した株式会社フォトクリエイトへの転職を決めました」

NTT東日本とは事業の方向性が大きく異なるスタートアップ企業に転職した重松氏。同社で東証マザーズ上場を経験したのち、そのまま幹部を目指す道ではなく、自ら起業することを選びます。その理由として特に大きかったのは、「自分で0→1を作ってみたい」という想いだったそうです。

起業人生の分岐点となる当時の様子を振り返る重松氏のお話からは、周りの環境と自分の想いのギャップや、自分が本当にしたいことを選ぶ視点など、自己分析の深さが垣間見えました。

シェアリングサービスの先駆け・スペースマーケット誕生の裏側

「0→1を生み出したい」という想いで起業を決意した重松氏は、外国のビジネスモデルをチェックする中で、当時まだ日本に浸透していない「シェアリングエコノミー」に注目します。

重松氏「Airbnbの会議室版やUberの家事代行版といった存在を知り、これからは個人間のビジネスが伸びていくと感じました。一方、その当時の日本には、まだ会議室の予約システムくらいしか広まっていませんでした。会議室やイベントスペースのシェアリングを扱う先行企業も1社しかないという状況でしたが、『この業界はこれから来る』という確信に近いものを感じ、シェアリングサービスの業界で起業しようと決めたんです」

起業当初、重松氏は前職の経験を活かしながら、「あらゆるスペースをシェアする」というコンセプトをバズらせようと試行錯誤しました。普通の会議室だけでなく、映画館や野球場、古民家にお寺など、個人での利用をイメージしにくい場所までシェアできるとアピールし、複数のピッチコンテストで優勝。これが、のちの資金集めにつながっていきます。創業時、たった2人のメンバーで動き出した事業は、今では60人の社員を抱えるほどに成長しています。

危うく資金ショート!? 苦労した「資金調達」の思い出

起業初期から勢いに乗り、1回目の資金調達もすんなりうまくいったと話す重松氏でしたが、事業を広げるタイミングで行った2回目の資金調達ではとても苦労したといいます。

重松氏「貸したい人と借りたい人の両方を確保しなければならず、プロダクトが伸びるまでに時間のかかるビジネスだったので、成長率と調達したい資金の兼ね合いが取れなかった。そのことが、2回目の資金調達で苦戦した1つ目の理由ですね。もう1つは、当時の社内に数字をマネジメントできるメンバーがいなかったこと。数字不得意な私が無理に担当していたこともあり、『この会社大丈夫なの?』と懸念されてしまい、来月資金ショートするかも…というところまでいきました」

危うく資金ショートしかけたという重松氏ですが、その時はぎりぎりで資金を確保することができ、経理面をサポートしてくれる仲間を迎えることもできたそうです。

資金面での危機を乗り越えた後も、コロナ禍でのキャンセルラッシュやGoogleのアルゴリズム変更など、さまざまな困難が重松氏の事業に襲い掛かります。「コロナ禍後も経営者として油断ならない状況が繰り返されてきた」と苦笑いも交えつつ話す重松氏でしたが、チームの力を借りながら前向きに困難を乗り越えてきた姿が伝わってくるお話でした。

起業家としての原動力と、これからの価値

さまざまな困難を乗り越えてきたスペースマーケット社ですが、コロナ禍を経て、テレワークの浸透やフリーランスの増加を背景に、シェアスタイルの多様化が追い風となります。最近では、ボードゲーム会やプライベートシアター、インドア花見®︎など、ユニークな活用事例も増えているとのこと。

最後に、これまでの振り返りも踏まえ、「困難を乗り越える原動力」について伺いました。

重松氏「もともと自分の中には、誰もが当たり前に使っているインフラサービスへのリスペクトがあり、場所を使いたいと思ったときに気軽に使える存在になりたいという想いがありました。最近で特にうれしいのが、地方に行ったときに『先日使いました!』と声をかけてもらうこと。それが原動力といえるかもしれません」

他にも、貸す人と借りる人、社員など、事業に関わっている人とのつながりが、重松氏にとっての大きな支えになっているといいます。スペースマーケットの利用をきっかけに、マイクロアントレプレナーが増えているという実感も、自身の原動力のひとつとして熱く語ってくださいました。

※少人数で小規模な事業を営む起業家や個人事業主のこと

重松氏「起業にはアートとロジックの両面が必要です。アート部分の再現は難しくても、ロジック部分はいくらでも鍛えることができます。世界中の成功事例を調べつくして一定の法則性を見つけ、尖らせた自分の得意と組み合わせていくのが、起業家としての成功につながるのではないでしょうか」

AIが進化し続けるこれからの時代のビジネスは、「人口動態や技術の動向も踏まえて考えていくことが大切である」と重松氏は指摘します。自身の事業を例に挙げながら、AIにできないリアルな領域が今後は価値を生んでいくのではないか、といった考察もお話しくださいました。

質疑応答では、「上場を意識し始めたタイミング」や「仲間との出会い方」に関する質問が寄せられ、終始活発なやり取りが交わされました。起業を志す参加者に寄り添いながら、自身の経験をもとにした具体的な回答を示す重松氏の姿がとても印象的なセッションとなりました。

第2部 起業のリアル!全貌と実例から成功をつかめ!

第2部では、⾃⾝も連続起業家であり、数多くの起業⽀援に携わってきた中島幸志⽒(サスティナブル・ストーリー株式会社 代表取締役)と、成功を収めた起業家たちを⻑年取材してきた磯⾙美紀⽒(フリー株式会社「起業時代」統括編集⻑)にご登壇いただき、自分らしい事業の見つけ方や、スモールスタートから広げていくリアルな事例をお聞きしました。

登壇者紹介

中島 幸志氏
サスティナブル・ストーリー株式会社 代表取締役/ウェルビーイング起業家/アントレプレナーシップ研究家)

共感起業大全 著者。18歳で起業し、連続起業家としてモノづくりからサービス、スタートアップからNPOまで多数の事業を創出。「自分の想いに沿って生きる人を増やしたい」という想いからアントレプレナーシップの研究をはじめ、大学教員、客員教授、企業役員などを歴任。2023年、共感で長く愛される事業を生み出すための起業家思考「共感起業大全」を執筆。感性で育まれる社会を未来に残すために、共創や事業/経営支援を行う。

 

磯貝 美紀氏
(フリー株式会社『起業時代』 統括編集長)

大学卒業後NTT東日本・ベネッセコーポレーションで、BtoB、BtoC マーケティング戦略立案・実行の他、プロダクトの企画開発・サービス開発等、幅広く担当。2021年にフリー株式会社に転職し、『起業時代』アプリ企画開発・ブランド開発を担当。統括編集長。「スモビのがっこう」がっこう長。個人事業主として、みらいの学びを創る教育プロジェクトにも参画中のWワーカー。「イキイキと働くおとながあふれる社会を創りたい」がモットー。双子男子の母としてワーキングマザー17年目。

自分の「好き」と「できる」が起業のヒントに

最初のトークテーマは、起業を志すときに誰もがぶつかる「何で起業すればいいのか、どうやって見つけるのか」というお悩み。「自分の想いに沿って生きる」ことを信条としている中島氏は、「好きなものの周りにビジネスは無限に存在している」と語ります。

中島氏「例えば僕自身は音楽をやっていましたが、音楽のプレイヤーとして考えると、音楽を教えることや楽器を弾く、作る、貸すこと、聞くことや音響など、本当にたくさんのビジネスが展開できます。自分が音楽とどう向き合いたいのか、どんな関わり合いをしていきたいのか探していった先に、ビジネスモデルを掛け合わせていく面白さがあるんです。僕の場合は『音楽を多くの人に届けたい』という想いがあり、ちょうどインターネットが広まったタイミングだったこともあって、“聞く”に特化したビジネスを展開することに決めました」

中島氏は第1部の話題にも触れ、「起業にはさまざまな困難がつきものだからこそ、好きなものでないと続けられない」との考えも示されていました。

次に『起業時代』の統括編集長として活躍されている磯貝氏から、ワークを使った起業アイデアの見つけ方を紹介していただきました。

このワークの第1歩は、自分がこれまで培ってきた3つの起業資源「コト」「モノ」「ヒト」を洗い出すこと。

磯貝氏「『Will』『Can』『Do』を考えるフレームワークがありますが、この『Can』の中で自分に何ができるかがわからない、という話をよく耳にします。そこで取り組んでほしいのが、この起業資源を洗い出すワークです」

このワークのポイントは、洗い出した起業資源を「かけ算」することだとか。

 

たとえ同じ資源を掛け合わせた場合であっても、何を軸にしてかけ算をするのかによって、違うアイデアが出てくるといいます。自身の「Can」分野の幅を知るきっかけとして、とても興味深い内容でした。

人との対話が、気づきとビジネスの可能性を広げる

ここから話題は、ビジネスの可能性を広げる「得意」の見つけ方に広がります。「自分の中で『当たり前』になっているものを、自分だけの力で見つけるのは難しいもの。そこで大事なのが、人と話すこと」と指摘する中島氏に、磯貝氏も賛同します。

磯貝氏「『視点を少し変える』というのがとても大切です。相手と対話することで、自分側から見た景色だけでなく、相手の視点から新たに見えてくるものがあります。これは、『自分がやりたいことを声に出して言いましょう』というのも同じ。やりたいことを口にすることで、相手とのキャッチボールが生まれます。そのキャッチボールを、いろんな人とやってみる。起業家の方々は、この“会話のキャッチボール”がとても上手なのだと、毎回の取材を通して実感しています」

起業家の仲間づくりについて、磯貝氏は「そもそもネットワーキング力が高い人が多い」という印象を語られています。

磯貝氏「起業して実際に動き出しているからこそ、ネットワークを広げる力が自然と伸びている人も多いです。自分の事業に直接関係のない分野の視点を取り入れるため、自ら動いて行動をしている人ほど、さらに大きく成長していると感じます」

起業家同士のコミュニティに関しては、中島氏から「質問することで気づく側面」についてのお話もありました。中島氏いわく、「人に質問をすればするほど、自分にとっての気づきが生まれる。さまざまな人をサポートしていくことで、自分のヒントを得ながら自問自答することができる」とのこと。

人との関わりの中で、自分では気づきにくい“得意”や“不得意”を認識し、お互いを補い合いながら力を発揮していく。そうしたプロセスを通じて、自分に「できること(=CAN)」が見えてくるというお話は、起業を考えるうえでの“自分の軸”を探る段階において、大きなヒントになると感じさせられました。

共感がビジネスを動かす時代に

続いて、磯貝氏が取材を通して出会った起業家たちのお話をもとに、これからの起業に欠かせない「気づく力」にフォーカスしてお話を伺っていきます。これからの起業に欠かせない視点として、おふたりが語ったのは「情緒的な価値に気づくこと」の大切さでした。

連続起業家として、さまざまなニーズに「気づいて」きた中島氏は、次のように語ります。

中島氏「感情が動く時代、共感が重要になる時代には、一人一人の価値観に基づいた変数的な価値を、どこに付加していくかがビジネスのすべてになってくると思います。『これに価値を感じてくれる人がいるのではないか』という視点で物事を見られるかどうか、そして、そうした見方ができる仲間がいるかどうか。これからのビジネスの根幹は、そこにあると思っています」

ここで紹介されたのは、実際に「気づく力」を起点に事業を展開してきた2組の起業家です。

ひと組目は、お手伝いしていたバーで手作りしたお菓子が好評だったことをきっかけに、スイーツ販売をスタートした方です。顧客の多くが糖質制限をしていることに気づき、低糖質スイーツへと方向転換しました。その後、レシピ本を出版し、現在は同じようにスイーツを販売したい人向けにシェアキッチン事業を展開しています。

もうひと組は、ドライフラワー事業に取り組むご夫婦です。最初は民家を借りて工房として活用していましたが、そこをセルフフォトスタジオとして貸し出すことで新たな需要を発見しました。さらに、顧客である花嫁たちのニーズに気づき、工房の2階でネイルサロンをスタートさせるなど、柔軟に事業を展開されています。

中島氏「紹介していただいた事例には、とても良いヒントがたくさんあります。『料理ができるから作って売る』というビジネスでは、スケールアビリティ(拡張性)がほとんどありません。ただ作って売るだけでなく、『作り方を教える』という視点に気づき、そちらに舵を切れるかがとても重要なのです。自分の美味しい料理をより多くの人に届けるには?というビジョンに自分のフォーカスを合わせられるかどうかが、事業を大きくしていけるかの分かれ道になります」

ここでモデレーターの一木氏からは、「気づく力」と並んで「やり抜く力」の大切さについても言及がありました。中島氏もそれに応え、「事業を展開していくには、動かない定数にこだわって時間を浪費するより、変数を見つけ出して動かしていくことが大切」と続けます。

自分の軸をしっかりと持ちつつ、変えていける部分をポジティブに探し続ける姿勢は、起業を目指す多くの参加者にとって大きなヒントになったのではないでしょうか。

“成功”のカタチは一つじゃない

中島氏「スタートアップには、事業として得られるお金以上のものがあるんですよね。自分自身の社会的な存在意義や立場、スキルアップもそうです。そこに仲間も生まれる。また、複数の事業を展開していると、それぞれの事業で得られるものが異なることにも気づきます。だからこそ、自分にとっての“成功”とは何なのか、その定義を持つことがこれからの起業ではとても大切なのだと思います」

その後の質疑応答では、「事業の上で最も困難だったこと」や「共感を軸にしたビジネスモデル構築で重要視していること」といったテーマに質問が寄せられ、具体例を交えながら丁寧に回答されていたのが印象的でした。

起業にまつわる等身大の学びや気づきがあふれていた今回のイベント。なかでも印象的だったのは、「気づく力」「やり抜く力」、そして「対話の力」という3つの力でした。特に対話の力」は、困難を乗り越える原動力にもなり、自分の想いや得意に気づくきっかけにもなります。「何から始めればいいのか分からない」と迷ったときは、ぜひTOKYO創業ステーションを訪れて、対話の機会を作ってください。


TOKYO創業ステーション丸の内は、「起業を、もっと身近に」という想いを持ち、皆さまの起業をサポートしていきます。

構成・文/やまぐちきよみ

 

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