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先輩起業家に聞く! 「子どもも自由に靴を選べる世界を作りたい」 サブスクで叶える“捨てない”循環型ビジネス

起業を考えてはいるけれど、「何から始めればいいのかわからない」「支援をどう使えばいいの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

2025年9月26日に開催されたトークセッション「子どもも自由に靴を選べる世界を作りたい!~TOKYO創業ステーション起業家のウラ側に迫る~」では、子ども靴のレンタルサブスクリプションサービス「Kutoon」を運営する、株式会社SlowFast代表取締役の谷口昌優氏にご登壇いただきました。

“子どもが自分で靴を選べるようにしたい”という想いから始まった谷口氏の挑戦。

社会課題への関心と起業への一歩をどのようにつなげていったのか。TOKYO創業ステーションの支援を活用しながら、ゼロから事業を形にした道のりを伺いました。

登壇者紹介

谷口 昌優氏
(株式会社SlowFast 代表取締役)
成蹊大学卒業後、日本通運株式会社入社。国内大手金融機関の法人営業に従事。在宅勤務が始まり、子どもも大人のように自由に靴を選べる環境を作りたい、そしてサイズアウトした靴の廃棄処分を無くしたいという想いから、未経験の分野から2021年9月に子ども靴レンタルのサブスクリプションサービスKutoonをリリース。

在宅勤務中の小さな気づきから生まれた起業アイデア

今回のトークセッションは、谷口氏とコミュニティマネージャーとの対談形式で進行されました。

まずは、在宅勤務中の何気ない日常から生まれたというKutoon誕生のきっかけについて伺っていきます。

谷口氏が起業を意識しはじめたのは、約5年前のコロナ禍で在宅勤務が始まった頃。自宅で過ごす時間が増え、子どもの成長を間近に感じるようになった一方で、ふとしたきっかけから子ども靴の課題に目が向いたといいます。

谷口氏「お昼休みに、当時2歳だった息子と毎日お散歩に行くようになり、自分が子どもに靴を履かせる機会が増えたんです。そのとき初めて、『子どもって毎日同じ靴を履いているな』と気づいたんです。自分だったら会社には革靴、休日にはスニーカーと選択肢があるのに、どうしてこの子は1足だけなのかな、と。それが最初の疑問であり、起業につながったきっかけでした」

日常生活の中で生まれた小さな気づきが、起業の大きなきっかけになったという谷口氏。当初は子ども服も事業の候補にあったそうですが、「家庭で洗えるかどうか」を基準に考えたとき、靴はお下がりとしても使われにくく、より課題性が高いと感じたといいます。

また、ご実家が自営業を営んでいたという背景から、起業や独立に対するハードルはもともと高くなかったそう。それでも最終的に起業に踏み切ったのは、「一度きりの人生だからこそ、社会的なインパクトを残したい」という強い想いがあったからでした。

谷口氏「起業のひとつの軸として“地球環境への貢献”というテーマを持ったときに、これからの自分の人生を考えても、多少のリスクがあっても後悔しない道を選びたいと思いました」

こうして“子ども靴”という商材に焦点を絞った谷口氏は、起業アイデアの具体化へと少しずつ歩みを進めていきました。

TOKYO創業ステーションとの出会い

子ども靴を軸にしたビジネスの方向性が見えてきたものの、実際にサービスとして形にしていくには、いくつもの壁がありました。

「起業はどうやって始めるのか」「株式会社・合同会社・個人事業主の違いは何か」といった基礎的な知識すらなかったという谷口氏は、まずはインターネットでの情報収集を始めたといいます。

谷口氏「最初は何もわからず、“株式会社 作り方”などで検索を重ねていた時に見つけたのが、TOKYO創業ステーションでした。とにかく一度話を聞いてみようと思い、コンシェルジュ起業相談*1を予約したのが始まりです」

イメージしていた事業のターゲットがママであることから、プロフィールを参考に「ECやマーケティングに強い女性」をコンシェルジュに選んだという谷口氏。
相談当初は事業内容をざっくりまとめた状態だったものの、提供方法など細かい部分については相談を重ねる中で徐々に具体化していったといいます。

2回目以降は、事業計画書策定を伴走サポートしてもらえる「プランコンサルティング*2を利用。谷口氏は当時を振り返りながら、「もっと事前に準備しておけばよかった」と感じた理由を次のように語ります。

谷口氏「初回の相談で『もう少し内容を細かく組み立てた方がいいね』というアドバイスをいただき、所定のテンプレートを埋めてくるよう指示がありました。2回目からはそのテンプレートをもとに相談させてもらったのですが、特にありがたかったのが、テストマーケティングを実施するように勧めていただいたこと。自分では気づけなかったニーズや課題を発見するきっかけになり、今振り返ってみても大きなターニングポイントだったなと思います」

数人の友人に協力してもらいながらスタートしたテストマーケティングで、特に印象的だったのは「メーカーによるサイズ感の違い」への気づき。靴業界の知識がまったくなかった谷口氏にとっては、想像もしていなかった課題であり、同時に“現場の声を聴く大切さ”を痛感する経験となりました。

未経験の業界だからこそ感じた行動することの大切さ

TOKYO創業ステーションとの出会いによって起業アイデアが具体的になっていく一方で、実際に形にしていく過程では想定外の壁も多かったという谷口氏。しかし、未経験の業界に飛び込むからこその迷いや悩みはなかったのかと尋ねたところ、「そこはあまり感じられなかった」という回答が返ってきました。

谷口氏「自分としては、『未経験だから』という負い目は全くないと感じています。その理由は、先輩の経験者がたくさん助けてくれているから。この事業は靴とクリーニングの2つの領域に関わっていますが、起業当時コロナ禍でスーツの受注が減っていたクリーニング業界の方からは『よく来てくれた』と歓迎していただきました。アポなしで訪問することも多かったのですが、染み抜きの方法やおすすめの洗剤まで教えていただくこともあり、知らない業界だからと言って一概にマイナスポイントではないと感じています」

自身の行動力を武器に、未経験の業界でも臆せず、周りからのサポートを集めていった谷口氏。事業のスタート時には「自身が天狗にならないために」という自戒も込めて、合同会社から始めたという話からは、大きな夢を叶えたいという想いと並行して、謙虚さも忘れないという谷口氏の人柄が伺えました。

試行錯誤を重ねた料金設定の裏側

サービスの立ち上げ当初からTOKYO創業ステーションをうまく活用して事業を進めてきた谷口氏ですが、特に大きな壁に直面したのが料金設定でした。

谷口氏は、「借りたいから返す」という“捨てない仕組み”を実装できるものとして、「売り切り型よりも売り上げの積み上げが見えやすく、事業としての持続性も高い」と感じたサブスクリプション型を事業モデルに採用。一方で、プランや料金の設計では現在の形に落ち着くまでにたくさんの試行錯誤を重ねてきたそうです。

谷口氏「最初の設計では返却時の送料を利用者負担としていましたが、『毎回送料がかかるのがネック』といった声が多く寄せられ、2年目からは送料をまとめた価格設定に変更しました。しかし、実際にかかる金額は同じでも、見かけの金額が上がってしまったことで、会員数が一気に減少してしまったんです」

このピンチから復活するきっかけとなったのも、TOKYO創業ステーションだったという谷口氏。「金額を上げた直後は会員数が減ってしまうのは当たり前。地道に活動を続けていくことで、徐々に回復させていくものです」というアドバイスを受け、利用者向けのアンケートを参考にInstagram運用により力を入れていったとお話されていました。

事業が形になった現在でも、谷口氏は折に触れてTOKYO創業ステーションのサポートを利用しているといいます。

谷口氏「最初は事業のためにお金を借りたいという想いがあったので、融資相談*3をよく活用していました。直近では『特許を取りたい』と考えたときに、TOKYO創業ステーションなら窓口があるのではないかと浮かび、知的財産の相談*4につながりました。インターネットから予約ができるというのも、ありがたいポイントですね」

失敗も学びに変えながら、事業の仕組みを磨き続けている谷口氏。その姿勢は起業支援を活用しながら“自ら動くこと”の大切さを体現していました。

“子どもの声”を起点にサービスを育てる視点

Kutoonのサービスを展開していく中で、谷口氏が最も大切にしているのが「子どもの声」。料金を支払うのは親ですが、実際に使う子どもの満足度も決してないがしろにしないように心がけているといいます。

谷口氏「子どもが喜んで靴を履いてくれないと、親から見た満足感も下がってしまうんですよね。なので、子どもがワクワクできる体験をいかに作り出せるかというのは、常に意識しています。男の子なら乗り物やかっこいい靴、女の子ならフリフリやキラキラのついた靴を多めに集めるなど、品ぞろえにも反映しているんです」

谷口氏が「子どもの声」を重視するようになった背景には、印象的な出来事があったそう。

谷口氏「子どもの靴を最初にそろえたとき、一人の女の子から『ここって大人が好きな靴しかないよね』と言われたんです。その言葉がすごく刺さってしまって。当時はいわゆる有名メーカーの靴がメインだったのですが、彼女からすると『全然楽しくない』と。そこで直接、どんな靴が欲しいのか聞いてみたら『プリンセスでキラキラしててかわいいやつ』と返ってきたんです。自分からしたら『そんな靴が借りられるはずない』と思っていたんですが、試しに何足か仕入れてみたら、並べたとたんに完売してしまいました。その経験もあって、子どもの意見もないがしろにしてはいけないなと考えるようになったんです」

今でもユーザーへのアンケートやインタビューを続けているという谷口氏は、顧客ファーストのサービスを持続していくためには地道な施策こそが大切なのだと話します。
現在取り組んでいる靴の回収事業でも、子どもが親しみやすいデザインを取り入れるなどの工夫をしており、子どもたちに「自分の行動が地球にいいことにつながっている」と感じてもらいたいというやさしい想いの原点が伺えるエピソードでした。

事業を諦めないためにできること

トークセッションの最後には、参加者からの質問に答えていただきました。

特に印象的だったのが、「採算などの部分で不安に思ったこと、それを乗り越えた方法は?」という質問への回答です。

谷口氏「事業計画を立てた段階では問題ないと思ったことでも、実際に動いてみたら採算が合わないということもありました。その時には『どうしたら事業を続けられるのか』と少し視野を広げることで、一つのサービスだけでなく、会社全体として採算が取れれば大丈夫と気づくことができたんです。自分の会社は壁に当たったら走りながら乗り越えていくことがほとんどなので、壁に当たったらまずは一人で考えて、ミニマムで動かしてみる。その結果を見てから、少しずつ周りに相談していく。全体でみることを意識しながら、『小さく始めて試す』を繰り返すような走り方を重ねている感じですね」

谷口氏の言葉からは、“事業を諦めない“という強い決意と覚悟が伺えました。その他の回答からも、自分の軸はぶらさずに、本質以外の部分で柔軟に変化を受け入れていくという姿勢がみられ、谷口氏の起業家としての強さを感じられる時間となりました。

最後に、谷口氏からこれから起業を目指す方に向けてメッセージをいただきました。

谷口氏「一生懸命頑張っていると、助けてくれる人や周りからの支援が見つかっていきます。もちろん起業にはリスクが伴いますが、自分一人で進めるのではなく、助けてくれる人と一緒に、少しでも世の中を前進させていってほしいと思っています。迷うことがあれば、ぜひ相談してみてください」

自分にない部分を謙虚に見つめ、TOKYO創業ステーションをはじめ、たくさんの支援を活かして起業された谷口氏の一言には、実体験をもとにした熱い思いが込められていました。

TOKYO創業ステーションでは、起業に興味・関心をもった方から、具体的に起業の準備を進めたい方、創業後の軌道修正や成長フェーズまで、起業の段階に応じて力強い味方になってくれます。谷口氏のように気になるアイデアが浮かんだ方は、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。

 

構成・文/やまぐちきよみ

 

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