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起業家が“死の谷”を越える鍵とは? エクイティ調達するなら知っておきたい、壁を乗り越える行動力〜前編〜

今後、エクイティでの資金調達を視野に入れて起業したいけれど、どんな心構えでいれば? そう思っている人も多いのではないでしょうか。
Startup Hub Tokyoでは、エクイティファイナンスを使って起業をめざす方向けに、シリーズセミナーを開催。

シリーズ開始に先立ち、『壁を乗り越えた2人の創業者~エクイティファイナンス実践講座プレイベント~』を開催しました。
日本初「株式型クラウドファンディング」事業を立ち上げた柴原氏、「あらゆるモノをIoT化する電池」を商品化して大きな話題をさらった岡部氏に、事業の前に立ちはだかった「壁」と、壁を乗り越えるために力となった信念や判断、仲間・支援者・資金についてお話しいただきました。

今回はその前編として、柴原氏の講演内容をお届けします。 

柴原 祐喜氏 株式会社日本クラウドキャピタル 代表取締役CEO

2009年カリフォルニア大学卒業。2012年明治大学大学院グローバルビジネス研究科修了。システム開発・経営コンサルティング会社の経営を経て、2015年株式会社日本クラウドキャピタルを設立、代表取締役CEOに就任。2016年秋、日本初の「株式型クラウドファンディング」事業者としての金融庁登録認可を取得。投資家と事業者のマッチングプラットフォーム「FUNDINNO」を開設。2017年春には第1号のファンディング案件を募集し、以降これまでに80件以上、総額24億以上の累計成約額を達成。現在、国内ナンバーワン企業となっている。エンジェルコミュニティの形成や、新株予約権型クラウドファンディングの取り扱い開始、調達後の企業向けの事業計画管理、株主管理のクラウドシステム提供、等、新しい施策も次々と打ち出している。 

起業前の課題意識

柴原氏:日本クラウドキャピタル 代表取締役の柴原と申します。現在の事業の柱は、第一種少額電子募集取扱業。簡単に言うと、株式投資型クラウドファンディングをやっています。株式投資型クラウドファンディングとは、簡単に言うと、ベンチャー企業や非上場企業が資金調達をしたい場合、個人の投資家から出資を受けられるというものです。本日は、「どういう課題でこのビジネスをスタートさせたのか」「起業前に準備しておくこと」をお話したいと思います。

ベンチャー企業出資の課題

柴原氏:ベンチャー企業の出資は、いろいろな業者を介在して資金が流れるスキームのため、どうしても景気に影響されます。資金調達額は、景気の悪化に相関してベンチャー出資額も減ってしまうことが一つの問題です。

日本、アメリカ、中国のベンチャー出資額は、2016年のデータでは、アメリカ、中国が10兆円規模でベンチャー出資が行われている状況に対し、日本は2000億円規模。対GDP費は、アメリカは0.28%のところ、日本は0.04%しかなく、アメリカと比べると1/7ほどしかない現状です。日本はベンチャー出資額が少ないため、ベンチャー投資も少なく、結果グローバル企業がこの20年日本に生まれにくい状況になっています。

国内投資では、ベンチャー出資はミドルとかレイターに集まりやすい傾向にあります。実際、一番お金が必要と言われている、立ち上げて間もない、アーリーと言われる企業は、サービスやプロダクト開発にお金がかかるため、収益が出にくく、お金が集まりづらい状況です。この課題への我々の取り組みはのちほどお話しします。

起業前の準備

「あるべき姿からの逆算」

柴原氏:まず、あるべき姿から逆算して、今何ができるのかを一番初めに考えること。特に、起業してからの道筋、どういう成長を描きたいのかをよく考え、今できることを進めましょう。

スタートアップライフサイクルごとの特徴と注意点
①シードステージ「アイデア具現化の段階」

柴原氏:シードステージとは、起業の準備段階です。具体的な資金提供者は、自分(自己資金)、家族・友人、エンジェル投資家。一般的には最初の実績(=トランクション)をつくり、必要最小限のリソースを活用してアイデアを形にしていく段階です。“死の谷(Valley of Death)”を登り切れず「死」を迎えてしまうスタートアップが一番多いのもシード期の特徴になります

②アーリーステージ「実績を積み上げる段階」

柴原氏:アーリーステージは、設備投資、開発、プロモーションなどに多額の資金が必要になります。エンジェル投資家や、アーリー専門のVC(ベンチャーキャピタル)、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が資金提供者として現れるのが特徴です。“死の谷”を無事乗り越えられたスタートアップの段階で、実績を積み上げていくフェーズです。ただし、収益は大きくないので、会社を支えるために資金を引き続き外部投資家から調達しなければなりません

③ミドル・レイターステージ「マーケットを拡大する段階」

柴原氏:シードからアーリーステージの活動を通してフィックスしたプロダクトやサービスを手に、マーケットを拡大してゆくステージです。顧客獲得のためにスピードを高め、よりアクセルを踏み込んで、赤字を掘る企業も多いです。投資家サイドからは、短期的な黒字を求める投資家と、さらなる成長を求めてアクセルを踏んでもいい、赤字を掘ってもいいという投資家とにスタンスが分かれるのがこの期の特徴です。順調に黒字をつくっていく会社か、メルカリのように赤字を掘ってから急成長を目指す企業かに分かれます

④エグジットステージ「ミッションを果たす段階」

柴原氏:外部投資家から資金を得た時点で、起業家、経営者の宿命たるミッションとしては、エグジットさせなければなりません。調達=エグジットさせる義務を負うという意識を忘れずに。IPO、M&Aのほか、株主コミュニティの選択肢も。株主コミュニティをつくる理由は、IPOというエグジット一択になってしまうと、企業の成長を狭めてしまうところにあります

失敗の多くは「市場ニーズ」「資金」「情熱」3つの不足

柴原氏:自分が作っているプロダクトやサービスが「市場に受け入れられなかった・ニーズがなかった」ことがスタートアップの一番大きな失敗理由というデータがあります。次が「資金不足」。プロダクト開発のために調達した資金を使い切り、乗り越えられなかった等が考えられます。その他、「情熱不足」も挙げられます。“燃え尽き”も次のサイクルに進めない大きな要因です。

身をもって感じているのは、感情面。だからこそメンターや周囲の人が心の支えになって起業家を支援しないと、起業家が孤独になりがちに。それらを起業前にイメージし、どのような成長カーブを描きたいのかをしっかりと考えながら起業することで失敗確率を下げることはできます。

課題設定のポイントは難易度、自分事化、市場ニーズ

柴原氏:よく言われている点として、「その課題を自分事として捉え、本気で課題解決を考えられるか」が非常に重要です。簡単に言うと、「その課題にムカついていますか?」ということ。私も起業時、「これはおかしいだろう」という気持ちをバネにしていました。自分事で本気で解決したい気持ちがなければ長続きしないので、課題を設定する際、改めて考えてみてください。

解決後の市場の有無も重要です。「市場のニーズがない」ことが一番大きな失敗要因なので、課題解決後にマーケットがあるかは特に考えたいポイント。小さい市場だけを目指すと、売り上げ・収益が伸びない状況になり、継続困難に。マーケットニーズは一番重要なポイントになります。
その課題は簡単に解決できるか?も重要です。簡単な課題設定では誰もが模倣でき、競合優位性がありません。課題は難しいほど解決後に、強い競合優位性が生まれるのもポイントです。課題設定が簡単か、その課題が自分事か、起業前によく考えてみてください。

課題解決までのストーリーは魅力的か?

柴原氏:課題を解決するまでのストーリーに魅力的かどうかは、今後チームメンバーが付いてくるかに関わります。自分も「こういうことをしたい!」と説明する際、メンバーの心に刺さるように伝わるかよう意識しながらストーリーを組み立てて説明していました。課題解決までのストーリーを魅力的に伝える方法も意識してみてください。

株式投資型クラウドファンディングと今後の課題

柴原氏:さて最後に再び、国内のシード、アーリーにいかにリスクマネーを供給していくかという課題について、我々の今後の取り組みをお話しします。

課題の解決として、一般の投資家がベンチャー企業、非上場企業に直接出資ができるような環境構築ができるのではないかと。その手段の一つとして、株式投資型クラウドファンディングを運営してきました。今後は非上場株の流動性の乏しさという課題の解決を考えています。投資家にお金を還元するために、エグジットといわれる企業が株式を売れる状態をつくり、IPOやM&Aというエグジットの手法以外に非上場株の売買市場を構築したい。具体的には、株主コミュニティ制度を使って非上場株の流動性を高めたく、サービスの提供を実現化させたいと思っています。

エグジットするための成長支援と合わせ、IPO、M&Aだけではない、エグジットの多様性による非上場株の売買市場をつくることで、企業が柔軟にエグジットをして投資家にお金が還元できるマーケットを構築するべくチャレンジしています。

ノバルス株式会社岡部氏の講演内容は、後編でご紹介します。

 

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