学生のみなさん、「学生起業」と聞いて、どんなイメージが湧きますか?
絶対ハードルが高い!
実現が難しそう!
めちゃくちゃ覚悟が必要!
こんなイメージを持つ学生諸君も多いのではないでしょうか?
社会人と比べてどうしても不足しがちな知識、経験、資金、スキル……etc。
いろんなモノの足りなさから、起業になかなか踏み出せないキミ。
学生起業を実現した3名の若手起業家から、イノベーションを起こす勇気をもらおう!
ということで、今回は9/6に開催した“「学生起業」という生き方を考える~Startup Stage 2020 プレイベント 第1弾~”についてのイベントレポートをお届けします。
イベントのテーマは「学生起業という生き方を考える」。
キーノートスピーチに「iU(情報経営イノベーション専門職大学)」の学長・中村伊知哉氏をお迎えし、学生起業を実現した若手起業家3名とパネルディスカッションをしていただきました。
- 登壇者プロフィール紹介
- まずは若手起業家の自己紹介から!
- 学生×起業、そのきっかけとは?
- 学生起業って、やっぱり反対されるもの……?
- ズバリ教えて!学生起業のメリットと苦労話
- withコロナの時代……起業するのはやっぱり不安!?
登壇者プロフィール紹介
【キーノートスピーチ】
中村 伊知哉氏 (iU 学長)
http://www.ichiya.org/
1961年生まれ。京都大学経済学部卒。慶應義塾大学で博士号取得(政策・メディア)。
1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。1998年、MITメディアラボ客員教授。2002年、スタンフォード日本センター研究所長。2006年、慶應義塾大学教授。2020年4月よりiU(情報経営イノベーション専門職大学)学長。
内閣府知的財産戦略本部、文化審議会著作権分科会小委などの委員を務める。CiP協議会理事長、吉本興業ホールディングス社外取締役、理化学研究所AIPセンターコーディネーター、東京大学客員研究員、慶應義塾大学特別招聘教授などを兼務。
著書に『超ヒマ社会をつくる』(ヨシモトブックス)、『コンテンツと国家戦略〜ソフトパワーと日本再興〜』(角川EPUB選書)、など多数。
【現役・若手起業家】
城宝 薫氏 (株式会社テーブルクロス 最高経営責任者CEO)
2014年、立教大学経済学部3年次に学生起業。訪日旅行客向けグルメプラットフォーム「byFood」と、飲食店検索メディア「テーブルクロス」を運営。予約が入ると世界中のこどもに寄付を届け、SDGsを推進。
Sustainable Tourismの推進、地域創生を目的に全国の自治体と連携中。スイス最古のSt. Gallen Symposium2019日本代表を務める。
高久 侑也氏 (株式会社Sportip 代表取締役CEO)
筑波大学体育専門学群卒業。その後一橋大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
筑波大学在学中は、フィットネス等のスポーツマネジメントの研究やカンボジアでのパラスポーツ普及活動などスポーツ・ヘルスケアを幅広く学ぶ。
筑波大学発ベンチャーとして株式会社Sportipを創業。
小島 貴之氏 (株式会社ピカブル 代表取締役CEO)
慶應SFC卒から慶應大学院中退。在学時にソフトバンクと共同で画面共有アプリ「ピカブル」を立ち上げ。動画サービスやWebブラウザをリアルタイム同期する技術を開発。その後、ソフトバンクから事業を買い取り、株式会社ピカブル設立。藤田ファンド、フジテレビ、LINE他から資金調達。
まずは若手起業家の自己紹介から!
中村氏 「それでは、自己紹介をお願いします。」
城宝氏 「私は大学3年生のときに株式会社テーブルクロスという会社を立ち上げ、いまは7年目に入りました。飲食店の検索メディア『テーブルクロス』と、訪日旅行客向けグルメのプラットフォーム『byFood』という2つのサービスを展開している会社です。どちらのサービスも予約が入ることで世界中の子どもたちに寄付を届けます。」
高久氏 「私は大学院1年のときに株式会社Sportipを創業しました。現在は2年目です。主にトレーニング・スポーツ・リハビリなど“動きの指導現場”に向けて、AIを用いた指導者を支援するサービスをつくっています。」
小島氏 「僕も学生時代に株式会社ピカブルという会社を立ち上げ、いまは大学院を中退し、専業で会社をやっています。WEBサイトや動画をスマホでリアルタイムに共有しながら、一緒にチャットや無料通話などのコミュニケーションが取れるサービスを提供しています。最近だとYouTubeやGYAO!と一緒にやるようになり、この秋にはAbemaTVやFODとの連携も予定しています。」
学生×起業、そのきっかけとは?
中村氏 「起業のきっかけを教えてください。」
小島氏 「会社をつくったきっかけは、遠距離恋愛の経験からです。遠距離恋愛当時のコミュニケーションは、チャットで記事を送り合ったり、音声通話をしたりでしたが、いまのテクノロジーを使えば離れていても一緒に笑ったり遊んだり、そういうことができるんじゃないかと思いこのサービスを立ち上げました。」
中村氏 「サービスは就職した先でつくることもできるし、他にも選択肢はあると思いますが、なぜ“起業”にしたのでしょう?」
小島氏 「確かにいろんな手段がありますよね。僕の場合は、学生時代にSoftBankとソフトを共同開発していたのですが、SoftBankの社内事業でやっていくのか、もしくは事業を買い取り新規法人としてやっていくのか、その決断を迫られたタイミングがありました。社内事業になれば、どうしてもマネタイムズの早い企業向けのサービスに持っていかれてしまう。例えばカスタマーサービスに転用とか。しかし僕は、コミュニケーションサービスをやりたい気持ちが強く、事業を買い取る決断をし、起業しました。」
中村氏 「城宝さんはどうでしょう?」
城宝氏 「私の場合、祖父が起業家だったので、将来起業したいという気持ちはあったものの、学生で起業するとは思ってもいませんでした。社会貢献型のビジネスモデルをやりたいと思ったきっかけは、インドネシアでストリートチルドレンを見たことです。自分と同じ年の友達なのに片や毎日学校に通っている、片やお昼からゴミ拾いに行って、お金に換えている。そんな生活の違いを見て自分は幸せなんだと気づき、ストリートチルドレンのためになる仕組みづくりをしたいと思いました。」
中村氏 「インドネシアの経験は、何歳頃のことですか?」
城宝氏 「小学校1~2年生の頃でした。」
中村氏 「城宝さんがいまやっている社会貢献型ビジネスは、例えばNPOに入るとか、企業に就職してやるとか、政府機関に行くとか、そんな道は全く考えなかったのですか?」
城宝氏 「高校1年生のときに2週間程アメリカに行き、社会貢献とは、NPOや寄付・ボランティアではなく“仕組みづくりをすること”が重要なんだと学びました。また、大学3年生のときにやっていたアルバイトが飲食店の広告事業だったこともあり、そこでアイデアを思いつきお金と人も集まったので、思い切って起業したんです。」
高久氏 「私のきっかけは、野球を通じた体験です。野球のコーチは現場の経験や勘に基づく指導が多く、私はその指導法により野球ができなくなってしまいました。これをきっかけに、個々の身体や目的に合わせた指導を届けるサービスはないかと調べたら、本気でサービスをつくっている人はいなかった。そんな経緯から“手段のひとつ”として起業を選びました。」
中村氏 「それは、いつ頃そう思いました?」
高久氏 「高校3年生頃です。自分には知識や経験がないと分かっていたので進学し、大学生活のなかでいろいろ経験したのち起業しました。」
学生起業って、やっぱり反対されるもの……?
中村氏 「学生起業、周りから反対されました?」
城宝氏 「友達、先輩、幼馴染、両親など、いろんな人に起業のことを話しましたが、10人中7人くらいに『やめておきなさい』と言われました。反対する人たちの共通点は、0から1の立ち上げをしたことがないこと。起業まではいかなくとも、自分で立ち上げた経験がある人には後押しをしてもらえました。ちなみに両親からは、応援とまではいかなかったけど、 納得はしてもらえた状況で起業できました。」
高久氏 「私は相談なく決めたので反対されることもなく。ただ、家族に話したときは、経営者である父から“代表の辛さ”を語ってもらい、辛いと知った上で『頑張ってやってみな』と応援してもらえました。」
小島氏 「僕の場合、両親は猛反対しましたね。いまも反対しているかもしれません。ユーザーが万人あたりでついてきて、ようやくやっていることを理解してもらえたというか。反対されても、やっちゃったほうがいいと思います。やっちゃって結果がついてきたら、いつか納得してくれるはず。」
中村氏 「会社を立ち上げるときって、人とお金が必要ですが、どう用意したんですか?」
高久氏 「人については、授業で隣にいた人に声をかけたり、SNSでDMを送りまくったりして集めました。お金は、両親が私のために貯めてくれたお金を就職のタイミングでくれたので、それを有効活用しました。」
城宝氏 「飲食店の検索メディアをするにあたり、様々な費用を考えた結果、1億円は必要でした。このお金をどうにかするべく、自分が知っている人全員に話す勢いでビジネスプランを話しました。最初にお金を出してくれたのは、高校時代の先生。そしてお父さんの知り合いとお母さん。これで2,500万円くらい集まりました。また、無担保・無利子で貸してくださる政策金融公庫にもプレゼンし、『学生に融資したことがない』と言いつつも学生融資第1号として出してくれました。政策金融公庫が融資したことで信用組合、信用金庫も立て続けに貸してくれました。」
ズバリ教えて!学生起業のメリットと苦労話
中村氏 「会社を立ち上げるときって、最初に必要になるのがお金。これを使えるかどうかが、ひとつのハードルですよね。僕ら大人としてはそのハードルを下げる仕組みづくりをどんどん構築していきたい。そこで3人に質問。学生起業して良かった点と、起業して一番苦労した点を教えてください。」
城宝氏 「大学3年生のときに起業しようか考え、失敗したくない、どうしよう、どうしよう……と悩んでいました。そんな時期に知人からあることを教えてもらい、『ああ、もう起業しよう!』と迷いを捨てました。何を教えてもらったかというと、会社の生存率です。立ち上げてから10年残る株式会社は、全体をみて1%切っているそう。学生起業の場合は、10年残る確率はもっと低く、1%もない。100社あれば1社残るか残らないか。10年残る確率が低いのであれば、『まずは5年やってみよう!』と5年間の計画を立てました。」
城宝氏 「大学3年生で起業すると、3年生、4年生と大学時代の2年間が使えます。そして卒業後になる3年間はまだ新卒入社ができる期間。起業して5年目で失敗しても、新卒入社ができるオプションを持っています。その前提で起業するなら何のリスクもないと決断しました。」
中村氏 「なるほど、新卒入社の3年間猶予!その考えを持っていれば、学生起業のハードルもグッと低くなるように思えます。苦労したことは何でしょう?」
城宝氏 「苦労は、知識も経験も人脈もないので、全てのことに悩んでしまうことです。資金がない!資金ショートだぁー!となったときも、人脈がないのでどうしていいか分からない。あと私、自分のオフィスが火災で燃えるという事件がありまして。保険に入っていなかったので大変でした。火災は稀なケースですが、この状況どうしていいのか分からない、マーケティングどうしていいのか分からない、分からないことを解決できる選択肢がない。そんな“分からない”という苦労にはいまも悩まされています。」
中村氏 「シリコンバレーはみんなが起業しているイメージですが、起業平均年齢は40歳くらいなんです。どこかの会社で知識や経験を得て、ようやく起業するというのが普通の世界。その点、学生起業はとてもチャレンジングだし、うまくいかなくてもしょうがない、うまくいったらスゴイ!という世界。実際にやってみないと知識も経験も身につかないのだから、それを得るためにも起業は良い手段だと思います。」
高久氏 「学生ゆえ、許してもらえたり、助けてもらえたりすることもありますよね。僕はいろんな大人から助けてもらい、起業しました。就職した同級生と比べても、経験値や考えていることがぜんぜん違うと感じています。先ほど城宝さんが『火災があった』と話されていましたが、修羅場を経験すると成長する実感があります。役職や場所・環境が人を成長させてくれるんだと思います。」
小島氏 「城宝さんがおっしゃったように“成功する確率は低い”という面はありますが、“打席に立てる回数”は圧倒的に増えると思います。学生起業のメリットは社会人より時間があること。最初はとにかくサービスを出して、ユーザーの反応を見て、ちょいちょい変更を加えて。このサイクルをどんどん回していかなきゃいけないので、時間が必要です。」
小島氏 「逆に学生起業のデメリットは、プロダクトの質が低くなりがちなこと。起業して分かりましたが、社会人の実践経験があるエンジニアはやはりレベルが高いです。学生だけでやろうとせず、早い段階からきちんとつくれる人をチームに巻き込んだほうがいい。」
中村氏 「確かにその通り。起業はいつでもできるし、学生時代にしかできないこともある。一方で、学生のときだからこそいろんな人に会ってもらいやすく、打席に入れる回数も増える。なかなか決断が難しいところですね。」
withコロナの時代……起業するのはやっぱり不安!?
中村氏 「さて、みなさんの会社は、コロナの影響はどうでしょうか?withコロナのなかで会社経営や働き方が変わると思いますか?」
城宝氏 「私の会社は飲食店の検索メディアとインバウンドのグルメメディアをやっているので、コロナの影響はだいぶ受けています。しかし、コロナの危機を感じた瞬間にカスタマーサポートだけ置いたまま国内事業を閉じ、世界中でリモートワークができる環境を整えました。その結果、売り上げが増加し、今期は大黒字になりそうです。攻めるところは攻める。引くところは引く。この決断により、コロナの影響があろうともうまくいくことはあると思います。」
高久氏 「私はコロナ禍のタイミングで起業しましたが、結論は“やったほうがいい”です。テクノロジーは成熟してきていますが、経済などの環境は変わっていくときなので、チャンスはあると思います。自社ではwithコロナの時流に沿い、オンライン上でフィットネスができる新しいサービスも開発しています。コロナ禍をチャンスと捉え、コロナの状況を読み取りながらやっていくことを楽しんでいます。」
小島氏 「弊社も完全リモート化し、集まるのは週1だけにしています。当初はけっこう問題出てくるかな?と心配していたんですが、エンジニア主体の会社ということもあり、なかなかうまくいっている。もともと自社サービスは、オンラインでも一緒に遊べたり、動画を一緒に観て笑ったりという領域なので、ユーザー数はコロナ前よりも圧倒的に伸びましたし、 サービスとして成長したという実感があります。」
中村氏 「3人のお話しから、“コロナのいま攻める!”という強さと逞しさを感じました。世界がガラッと変わるときこそ“ビジネスの芽”があります。それでは最後に起業を目指す学生諸君にメッセージをください。」
城宝氏 「このイベントに参加されている最年少は10歳と聞き、日本の未来は明るいなと思いました。起業というのは、すごく良いアイデアを出してもぜんぜん流行らないときもあるし、逆に、自信は全くないのに出してみたら流行ることもある。本当に“やってみないと分からない”ものなんです。このイベントを観ている方は、コロナの状況を知りながらも起業したいと思っているはず。そこまで熱い気持ちがあるならば、まずはやってみましょう!」
高久氏 「私は野球しかやってこなかった何もできない人間だったんですが、それでもまあ、こんな奴でも起業ができることを知って、チャレンジいただけたらなと思います。」
小島氏 「もし『起業したいなぁ』とか、『こんなビジネス考えているんだけど』と思っていたら、いつでも相談に乗るからTwitterでDMください。その際、『いまの大学生・高校生たちはこんなアプリを使っているよ!』とか、『こんな遊び方をしているよ!』ということを教えていただけると嬉しいです。いつでもお待ちしております!」
以上が、中村伊知哉氏×若手起業家3名のパネルディスカッションでした。
このイベントは、スタハ唯一のビジコン「Startup Stage2020」のプレイベント第1弾として開催されました。Startup Stageのエントリーには「学生の部」もあるので、起業が気になるならぜひチェックしてみて!
Startup Stage2020
※このイベントは終了いたしました
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