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株式会社トラーナ代表取締役 志田典道 さん

「子どものための玩具づくりを未来の子どもの“負荷”としないために」

起業家の本棚では、注目の起業家が語る「その時、私を支えた1冊」をご紹介します。 今回は、大学在学中に起業し事業を持ったまま就職というユニークなパラレルキャリアからスタートした株式会社トラーナ代表取締役の志田典道さんです。

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志田典道さん(株式会社トラーナ代表取締役)

1983年生まれ、東京都出身、4児の父。明治大学法学部在学中に友人とWeb制作会社を創業。事業譲渡後、複数の外資系IT企業でエンジニア、プロダクトマネージャー等の事業経験の後、玩具のサブスクリプションサービスを展開する株式会社トラーナを2015年に設立。(撮影・蔦野裕)

 

おもちゃ業界では画期的だった “ おもちゃのサブスク ” サービスを立ち上げた経緯、そして業界に新たな風を起こした原動力とは。 

志田氏「就職活動で面接した際、とくに聞かれなかったので在学中に起業したことは言ってなかったんです。入社後、源泉徴収のときに人事から“アルバイトでもしてるの?”と聞かれ“いえ、会社の取締役をしてます”と。 “こんなケースは初めて”と言われましたが(笑)、了承を得られたのでしばらくセキュリティソフト開発会社のエンジニアと経営者というパラレルワークを続けていました」とユニークなキャリアの始ま
りを振り返る志田さん。
「在学中に同級生と起業した理由は“この仲間と何かするなら今しかできない”と思ったからです。何がしたいというより、とにかく今何かに挑戦したいという気持ちが強かったですね」

 

その後、学生時代に立ち上げた事業は譲渡。エンジニア職も転職しさまざまな環境で経験を重ねた。

志田氏「台湾企業の日本法人立ち上げに携わったり、外資系でカントリーマネジャーを目指して出世のハードルを感じたり、いくつかの企業を経験するなかで、また事業を立ち上げようという思いは強くなっていました」

 

そんなとき目を止めたのが“おもちゃ”だった。

志田氏「当時、1歳になる2人目の子どものおもちゃを買おうと量販店に行き、メインの棚にはキャラクターもののおもちゃばかりが並んでいるのを見て、もっと選択肢があってもいいのに…と。端のほうにはちゃんと知育玩具も売っていて、気にはなるものの子どもが喜ぶのか使ってみないと分からず、それなりに高いので結局その時は買わなかったのですが、後から知育玩具について調べていくうちに、大量に廃棄されているおもちゃの廃棄問題の現状を知りました。おもちゃの買い取りや再利用システムも見当たらず、子ども向けのものを作るのに、それが未来の世代に負荷となって返ってくるのはおかしいのでは…と考えるようになりました。それで、当時定着してきた映像配信サービスを見て、おもちゃもこんなふうに使いたいときにおすすめのものが手軽に楽しめたらいいのに、と思ったんです」

 

2015年、玩具のサブスクレンタルサービス「トイサブ!」をスタート。常に子どもの成長に合わせて定額でおもちゃ・知育玩具をレンタル・返却できる、おもちゃ業界では画期的なサービス。

志田氏「業界では新業態とあって卸しさんやメーカーさんに理解してもらうまでにはしばらく時間がかかりました。それでも、2019年に“サブスク大賞”を受賞し、時代もサブスクが認知されるようになるにつれ、おもちゃ業界の空気も変わってきましたね。ユーザーにおいても、当初は“他人が使った玩具”にネガティブな反応を示す方も多かったのですが、当社の厳しいクリーニングやメンテナンス、製品チェック体制を評価いただいていることもあり、最近はそういう懸念も少なくなりました。逆に、SDGsの観点からも喜んで頂いたり、お子さんに“大事に使った玩具は、一度おもちゃ王国に帰って、また別の子のところに行くんだよと教えています”という声、一人ひとりに合わせておすすめされた玩具を通して自分の子どもについて新たな発見が得られたという声を聞いて、手軽で便利というメリットにとどまらない、もう少し大きな意義を見出していただけていることを大変うれしく思っています」

志田典道さんの起業家年表&「その時の1 冊」

【2006年】 明治大学法学部在学中に友人とWeb 制作会社を創業

【2008年】 事業経営者のまま、トレンドマイクロ社にエンジニアとして就職

【2012年8月~】 台湾・中磊電子の日本法人立ち上げに参画。他、複数の外資系IT 企業でエンジニアやプロダクトマネージャーなどを経験

【2015年3月】 玩具のサブスクリプションレンタルサービスを立ち上げるべく合同会社を設立

『おもちゃと遊具の心理学』(著者:J. ニューソン、E. ニューソン 精神医学選書/黎明書房)

「起業準備をしていたころに読んでいた本。同書を読んだうえで、子どもの成長と遊びがどのように関連し、その身体的・精神的な発達を、遊びを体現する玩具がどのように支援するのかを学びました」

『フリーエージェント社会の到来』(著者:ダニエル・ピンク ダイヤモンド社)

「起業を決意した時は何かに背中を押されたというより、「会社という箱を作ってチャレンジしよう」という自分自身の熱狂感で行動していました。その熱狂感の元になったのがこの本です。
社会はきっとまたより大きな組織で仕事をする流れから小さい単位に分かれていくんだろうと感じ、自分もさらに小さな単位でやらなければと強く思いました」

【2015年】 株式会社トラーナを設立。11月「トイサブ!」運営スタート

【2017年1月】 合同会社から株式会社トラーナに組織変更

『サンクチュアリ』(著者:史村翔 画:池上遼一 小学館)

「困難を感じたときに気持ちを鼓舞してくれた漫画。勇敢でビジョナリーな主人公・北条彰に胸打たれることが多く、周りを支える浅見、渡海といった力強いチームを見て鼓舞されました。
「オレがやろうとしているのは今の繁栄ではない」という名言を、いつも見えるところに書いてあります。日々、その言葉を目にしながら、手元足元ばかりでなく先を見る視点を忘れないよう心がけています」

【2019年】 『日本サブスクリプションビジネス大賞2019』初代グランプリを受賞

【2021年5月】 505.27坪という過去最大の規模となる第三拠点を千葉市に開設。これまでの2 拠点と比べ3 倍の発送量を確保

【2021年6月】 ユーザー約9000名

子どもの成長に合わせたおもちゃ・知育玩具を定額レンタル!

株式会社トラーナが2015年11月から運営を開始した「トイサブ!」は、0歳3か月~満6 歳の乳幼児向け知育玩具・おもちゃサブスクリプションレンタルサービス。同サービスでは最短2カ月ごとに乳幼児向け知育玩具・おもちゃ6点(4歳以上はおもちゃ5点)の交換が可能。申し込み時やおもちゃ返却時のアンケートをもとに、同社専属のプランナーが各家庭に最適なおもちゃを選定し、すくすく成長する乳幼児それぞれにぴったりなおもちゃを定期的に届けてくれる。
「幸せな親子時間を増やそうぜ」の合言葉と「お子様に携わるすべてのご家庭の方におもちゃを通して充実した時間を過ごしていただきたい」という代表・志田氏の思いをもとに誕生したこのサービスは、運営開始するやメディアでも話題を呼び、2021年6月時点で約9000名のユーザーが利用。おもちゃそのものを持続可能な経済発展の要素ととらえ、未来を過ごす子どもたちへより良い社会提供を目指す、画期的なサービスとなっている。
同社では2024年までに10万世帯の常時利用可能を目指すべく、今年5月末に過去最大の規模となる3つ目の拠点を千葉市に開設。
また、社内スタッフへの昇給制度など雇用体制にも重点を置き、自社開発中の社内管理システムにより、スタッフにとってさらに効率的で便利なオペレーションづくりを目指している。


株式会社トラーナ
【URL】https://torana.co.jp

 

取材:TOKYO HEADLINE