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先輩起業家に聞く! TOKYO創業ステーションの活用法と40歳からの起業という新たなキャリア形成

TOKYO創業ステーションに足を運んでいるけれど、どうやって活用すればいいのか、実際に起業するまでにどんな行動が必要なのか分からないという方もいますよね。そんな時は、実際にTOKYO創業ステーションを利用して起業し、活躍を続ける「先輩」に話を聞いてみるのが一番です!

今回は、「先輩起業家」としてITプロジェクトスコープ管理のコンサルティング事業などを手掛けるDiGRIT Technologies 株式会社 代表取締役の鬼塚智義氏をお迎えしました。
TOKYO創業ステーションのさまざまな支援メニューをどう活用したのかなど、起業準備をより具体的にイメージできるイベントの様子をレポートします!

 

登壇者紹介

鬼塚 智義 氏
DiGRIT Technologies 株式会社 代表取締役)

創業前は、銀行系シンクタンク、外資系IT企業、大手総合ファイナンス企業等を経て、総合コンサルティングファームに勤務。ファイナンスやITテクノロジーの領域で、国際事業企画、海外現法の経営管理、海外現地への事業会社の進出支援、ビジネス・ITに関するコンサルティング、プロジェクト管理、海外現地企業に対するDX支援などに従事。中国・東南アジアを中心に数か国に長期の駐在・滞在経験。2023年1月DiGRIT Technologies 株式会社設立。企業のDX支援を主軸として、海外情報リサーチ・レポート支援など各事業に従事。

40代で起業に踏み込んだきっかけ

今回のイベントは、コミュニティマネージャーが鬼塚氏にインタビューする形式で進められました。まずは、鬼塚氏が起業を考えたきっかけや40代で起業に至った経緯について伺っていきます。

ファイナンスやITテクノロジーの領域で事業を展開し、中国や東南アジアを中心とした海外駐在経験もある鬼塚氏が起業を意識し始めたのは、大学の頃からだといいます。
経験や資金面から学生起業の道は選びませんでしたが、社会に出てキャリアを積みながら「起業」や「独立」へのアンテナを常に張り続けていたそうです。

鬼塚氏「キャリアを歩んでいく中で、私自身に何ができるのか、何をしたいのか、そして何をするべきなのかという想いを醸成していきました。私自身がやれることとして海外経験や海外人材とのネットワークがあること、やりたいことであればこれまでのキャリアで培ってきたITテクノロジーや海外ビジネスの知見を活かしていくこと、そして何よりも自分の経験能力を発揮し、日本社会に貢献していきたいという想いが募っていき、起業に至ったのです」

このような経験や想いを積み重ねていく中で、40代で実際に起業に踏み込んだ背景には「コロナ禍」の影響もあったとのこと。

鬼塚氏「40歳になるかならないかでコロナ禍に入り、当時は海外に駐在して現地企業・日系企業のDXを支援する仕事に邁進している時期でした。今後の仕事に対する希望や期待、やる気に満ちている一方、40歳という人生の折り返し地点を迎えたことで、将来のキャリアに対する漠然とした不安や迷いを抱くように。そこから定年より先まで見据えたキャリアを考えるようになっていきました」

ちょうど時を同じくして家庭を持った鬼塚氏は、独立に向けて動き出す半年以上前からパートナーと相談や話し合いも進めていたといいます。
独立への前段階としてスキルの棚卸などを進めながら、パートナーの理解もしっかり得られるように動いていたというお話が印象的でした。

TOKYO創業ステーションとの出会い・起業準備

鬼塚氏がTOKYO創業ステーションを利用し始めたのは、2022年頃。どのように起業を進めるのか悩んでいた時期に「起業相談」というキーワードを検索する中でTOKYO創業ステーションを知り、登録に至ったといいます。

利用当初はまだ海外に駐在中だったそうで、コロナ禍の影響もあり、ほぼオンラインでセミナー受講やビジネスプランの作成に取り組んでいたという鬼塚氏。起業までに実際に利用したメニューは、コンシェルジュ起業相談やプランコンサルティング、融資相談、専門相談など多岐にわたります。

鬼塚氏「相談するコンシェルジュを選ぶときは、自身の専門分野であるファイナンスやIT、ソフトウェアに知見を持っている方をまずは基準としていました。相談に行くようになったのは、自分のビジネスプランの資料を何枚か作ってからですね」

周囲に起業経験のある人が少ないという理由から、鬼塚氏は相談先を1人に絞らず、さまざまなコンシェルジュの意見を聞くように心がけていたそう。先輩起業家でもあるコンシェルジュと壁打ちをしながら、事業計画をさらに具体化していきました。

さらに鬼塚氏は、BtoBをメインとした自らの事業においては株式会社の設立がメリットになると考え、専門相談や融資相談といったメニューも積極的に利用しています。

事業計画書の作成段階では、基本的な作り方もわからない状態から自己流で書き進めつつ、プランコンサルティングを利用することで対外的にどのような情報を入れるべきなのかといった知見を得ていったそうです。幅広い意見を聞くために利用期間は2~3か月と少し長めに取り、複数の相談員と相談を重ねたといいます。書籍だけでは対応しきれない具体的な課題に対し、自らの事業に合わせて多角的にアプローチできることが、各種支援メニューの魅力だと語りました。

起業してよかったこと・苦労したこと

TOKYO創業ステーションを卒業して、まもなく起業したという鬼塚氏。起業してよかった点と苦労した点については、以下のようにまとめています。

良かった点としては、自由度が高く、組織とは違った働き方ができる点が挙げられています。また、収入は事前にある程度の希望をもっていたといい、現時点ですでに希望に近いレベルに届いているとのこと。

鬼塚氏「独立するときはまだどうなるのかわからないタイミングだったので、現在の収入よりも低くなる場合、同等レベルの収入がある場合など複数のシナリオを想定していました。どの状況に至っても、ある程度の期間は生活を維持して、家族を養っていけるように考えていましたね」

鬼塚氏いわく「無収入になっても2年が限度、2年経って芽が出なかったら会社員に戻る必要がある」という意識も常に持っていたそうで、あらゆるパターンを想定しておくことがしっかりとしたリスクヘッジにもつながると話していました。

苦労した点については、特に顧客獲得の継続や信用の構築について詳しくお聞きしました。

鬼塚氏「信用を構築するという部分は、難しい分野として、1年目から特に意識していたポイント。融資をしてもらう際に自分のキャリアや実績を評価してもらう必要があったので、起業してからも信用を得るためには自分の実績を積み重ねていくことを意識していました。取引先との関係でも、短期で考えるのではなく、中長期的な視点をもって関係を築けるように信用を積み重ねる意識を持っていましたね」

信用の構築については、「新しい取引先につないでもらったり、提携先を紹介してもらって事業が広がったりという結果につながっている」という話もされていました。鬼塚氏はひとつひとつのネットワークを広げる意識をもって、現在も活動しているといいます。より大きな目標のために、まずは目の前の関係を大事に作り上げていくという鬼塚氏の姿勢が伝わってくるお話でした。

今の自分から起業前の自分に伝えたいこと

続いては「今の自分から起業を考え始めた当時の自分に伝えたいこと」というテーマで、主に3つのポイントをお話しいただきました。

最初のポイントとして「会社事務は計画性をもって進めること」を挙げられた鬼塚氏。
株式会社として起業する場合、さまざま事務作業が必要になります。特に決算や給与支払報告書、法人確定申告などは期限が決まっており、間に合うように計画を立てながら準備を進めなければなりません。
これから株式会社での起業を考えている場合、このあたりの知識については「セミナーや専門相談を活用するといい」と鬼塚氏は話されています。セミナーやイベントの情報にアンテナを張って正しい知識を身につけることも、計画性をもって行動するにはとても大切な要素なのです。

2つめのポイントとして、「起業してすぐは、これまでのキャリアで積み重ねてきたことが大切」というお話もありました。

鬼塚氏「いきなり経験のないことにチャレンジしても、収入面などでなかなか芽が出ないかなと思っていて。まずは自分の積み重ねてきたことから始めるというのは意識していました」

起業する前段階として過去の経験やスキルの棚卸しを行い、それらを掛け合わせながら事業アイデアの絞り込みを進めたという鬼塚氏。これから事業範囲を広げていく上でも、この視点は忘れずに、社会貢献できる事業に着手していきたいとお話しされていました。

最後のポイントとして挙げられたのが、「まずは一歩を踏み出す勇気をもつ」ということ。
マインド面ではさまざまな起業経験者の話を聞いたり、交流をもったりしてモチベーションを高め、行動につなげていった鬼塚氏ですが、実務面では特にリスクヘッジを重要視していたといいます。

40代以上で起業する場合、家庭など守らなければいけないものがある中での起業になることが想定されます。事前にしっかりとリスクヘッジを行い、どのような展開を迎えたとしても対応できるようにしておくことが、「一歩踏み出す勇気」を支える基盤になるとのことでした。

起業するために必要なこと

鬼塚氏には最後に、「起業するために必要なこと」を伺いました。

マインド面の心構えについては、「はじめはオリジナリティ(新規性)を追い求めなくていい」と鬼塚氏はいいます。

鬼塚氏「オリジナリティを追い求めすぎて、『ビジネスプランコンテストで優勝するような輝かしい事業プランがないと起業できない』と思ってしまうのはあまりよくないと思っています。起業するのであれば『多くの事業アイデアは誰かが考えたことがあるもの』と考えて、まずは行動して実行してみることが大切。そこから徐々に仲間や資金を集めていくことで、オリジナリティのあるビジネスを作っていけるのだと考えています」

また、起業に役立つ経営理論を知ることも、自身の行動指針を定め、事業の成功確率を上げるために有効であるとのこと。
鬼塚氏がビジネススクールで出会った「エフェクチュエーション」の理論を例に挙げ、すでに持っている資源や手段を用いて、いかに結果を作り出すのかを考える重要性について説明していただきました。

その後は参加者の皆さんからの質疑応答の時間へ。
特に印象的だったのは、副業禁止のサラリーマンの場合でも、起業に向けて動くためには「自分が経営者になったつもり」で考えてみることが大切だというお話です。「副業OKであればチャレンジした方が良いけれど、NGでもできることはある」という回答に、どのような状況であってもできることは何かを常に考え、リスクヘッジを欠かさない鬼塚氏の起業に対する姿勢を垣間見ることが出来ました。

最後に鬼塚氏から「『千里の道も一歩より』ということで、まずは一歩を踏み出す勇気を持っていただきたいと思います。その際はリスクヘッジもぜひお忘れなく」とのエールをいただき、今回のイベントは終了となりました。


構成・文/やまぐちきよみ

 

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