インターネットを介して不特定多数の人たちから少額ずつ資金を調達することができる「クラウドファンディング」。プロジェクトを成功に導くためのコツをつかめば、新しいアイデアをカタチにする上で強い味方になってくれるでしょう。
10/1にスタハ丸の内で開催されたイベントでは、国内最大のクラウドファンディング・プラットフォームを運営する株式会社CAMPFIREの社外パートナーとして年間200件以上の相談を受けている大堀悟氏が登場。今回は「購入型クラウドファンディング」の基礎知識を中心に、成功事例をまじえながら初心者でも失敗しないための必須ポイントを教えてくれました。
講師
大堀 悟氏 (株式会社リバ邸 執行役員 / 株式会社CAMPFIRE 社外パートナー)
2016年に初のクラウドファンディングに挑戦。目標金額を開始3時間で達成、最終着地は現金支援も含めて達成率400%弱。以降も10件以上のプロジェクトを起案するとともに、現在は株式会社CAMPFIREの社外パートナーとして月に20〜30件のクラウドファンディングの起案相談を受ける。旧CAMPFIRE×LOCAL石川を担当。
- 講師
- クラウドファンディングは「ただのオンラインショップ」!?
- クラウドファンディングでできる3つのこと
- クラウドファンディングの「ここがすごい!」4選
- ざっくり2分類で紹介! 成功事例から学ぶポイントまとめ
- クラウドファンディングは事前告知が命!
クラウドファンディングは「ただのオンラインショップ」!?
ここ数年、ニュースなどでも話題になり社会的認知度がグッと上がったクラウドファンディング。気になるプロジェクトを支援したことがある人もいるでしょう。一方、カタチにしたいアイデアや想いはあっても、プロジェクトの起案者となるには少し敷居が高いように感じる人も少なくないのでは?
講師の大堀先生は「クラウドファンディングは革新的な取り組みというイメージが先行しがちですが、実態はただのオンラインショップ。アイドルのコンサートチケットやセミナーへの参加をネットで予約する“事前販売サイト”と同じ仕組みです。」と、もっと気軽に考えてほしいといいます。
クラウドファンディングでできる3つのこと
クラウドファンディングにはいくつかの種類があり、大堀先生が今回、主に解説されたのは「購入型」。起案者が立てたプロジェクトに対して支援者がお金を支払い、そのリターンとして商品やサービスを受け取る仕組みです。
ただし、これだけで終わらないのがクラウドファンディングの強み。単なる資金調達とは異なる役立つポイントを見ていきましょう。
①資金確保(キャッシュ)
大堀先生「開業や開店の資金調達といえば、金融機関からの借入や関係者などからの出資が一般的。これらに比べてクラウドファンディングは手軽に資金集めができますが、店舗を出すにしても出店資金のすべてをこれでまかなうのは難しい。物件などは自己資金と借入金で確保しておいて、たとえば“大型冷蔵庫を入れて、カウンターの素材を白木するには100万円ほど足りない”となったときに、資金の一部を補てんする感じの資金調達はクラウドファンディング向きといえるでしょう。」
②需要調査(テストマーケティング)
大堀先生「特に新商品を開発する際に役立つポイントです。商品化したいアイデアがあっても、実際に売れるかどうかわからないもの。マーケティングをしておかないと大量の在庫を抱えるリスクが生じます。そんなとき、クラウドファンディングで事前販売を展開してみるのもひとつの手。購入型クラウドファンディングには、期間内に目標額が達成された場合だけプロジェクトが成立する“All or Nothing型”という資金調達法があります。たとえば『事前販売で500個予約がとれたら商品化する』という目標を掲げてやれば、支援の動向がそのままテストマーケティングになる。結果的に目標達成にいたらず、プロジェクトの立ち上げにかけた時間と多少の広告費が失われたとしても、売れない商品の在庫を抱えるという大きな損失は避けることができます。」
③広告&広報(事前予約販売)
大堀先生「実際に新商品を発売することになったときに、クラウドファンディングで先行発売などを展開すると商品の認知をかなり広げられる効果があります。そういう意味では、新商品のプロモーションを最初から意識してクラウドファンディングのページをつくることをおすすめします。」
クラウドファンディングの「ここがすごい!」4選
前出の広告&広報効果について、大堀先生は「クラウドファンディングにおいて、まだあまり注目されていませんが、やり方次第では大きな価値が生まれる。」と強調します。そうした点を含めたクラウドファンディングの優れた特徴を、成功事例を紹介しながら解説してくれました。
①お祭り感+広告&広報で発売前から認知拡大
大堀先生「クラウドファンディングの認知は広がっていても、今はまだ実際にプロジェクトを起案している人はそう多くない。冒頭でも触れたように実態はオンラインショップですが“クラウドファンディングに挑戦している人=なんだかすごいことをやっている先駆的な人”というイメージが強いぶん、話題になりやすいんです。たとえば健康的にダイエットできる食事を販売するプロジェクトでは、クラウドファンディングの開始と同時に広報活動もしたおかげで、商品の発売前に171人の支援者から200万円以上もの資金が集まりプロジェクトは大成功。そのことが話題になってメディアにも取り上げられるという相乗効果が生まれ、すごい勢いで商品発売のスタートダッシュをきることができたのです。」
②強いドメインなら検索エンジン上位に残り続けられる
大堀先生「クラウドファンディングを展開するプラットフォーム選びも重要です。国内最大のCAMPFIREなどドメインが強いところはアクセス数も多いことから、人気があるページは検索エンジンでTwitterよりも上位でヒットすることも。まずこのこと自体がすごく価値のあることで、Googleなど検索エンジン企業からの信用度も高くなります。さらにプロジェクトの終了後もプラットフォーム事業者が無くならない限り、広告効果の高いページが無料で残り続けることは、すごく有益だと思います。」
③終了後は「ページカスタマイズ機能」でLP的に活用
大堀先生「たとえばCAMPFIREではプロジェクト終了後に“ページカスタマイズ機能”をつけることが可能です。オシャレな画像をハメこんだり、画面に【詳しくはコチラ】ボタンを追加できて、広告導線として独自の商品販売ページにユーザーを飛ばすことができる。つまり、クラウドファンディングのページが、そのまま商品やサービスのランディングページ(LP)としても活用できるということです。」
④支援の実績が社会的信用につながる
大堀先生「最近サポートした中で興味深かったのは、コーヒー店の出店資金のためにクラウドファンディングで200万円を集めた個人事業主の方が、その実績を提示して金融公庫に借入申請したところ希望額の倍以上の融資が下りたというケース。単に出店エリアの客単価などから売上を予測して事業計画をプレゼンするよりも、クラウドファンディングによる事前予約販売で200万円の売上が出ているという実績が銀行にとって信用情報になったいい事例です。」
ざっくり2分類で紹介! 成功事例から学ぶポイントまとめ
ここであらためて大堀先生は、購入型クラウドファンディングにおける代表的なプロジェクト形態を2つに分類し、それらを成功に導くための要点をまとめてくれました。
①スペース立ち上げ系(利用者&資金集め)
- 事前告知&ストーリー共有
- 個人で行う鬼のDM
- プロジェクト自体への巻き込み
- 自分事にしてもらう
- 参加型のリターン用意
大堀先生「店舗やゲストハウス、シェアハウスなどのスペースを立ち上げるプロジェクトは、なぜそのスペースをつくりたいのかといった起案者の想いや社会的意義などに支援者の注目は集まりやすい。なので、熱意を込めたダイレクトメッセージ(DM)を個々人に送ることも重要になるし、リターンにも工夫が必要です。たとえばゲストハウスをつくるプロジェクトなら、“みんなで囲める大きなテーブルをDIYでつくる体験型イベントに参加できる権利”をリターンにするとか。すると、それを体験した支援者たちがSNSやブログに写真や感想をアップしてくれる場合が多いので、おのずとスペースの情報を拡散する“仲間”になってくれるという現象が起こりやすくなります。」
②新商品・新サービス販売(事前予約の獲得)
- LPだと思ってつくる
- リスト取り&限定個数を用意
- 広告活用(CAMPFIRE広告)
- 広報活用(プレス3段階)
- 成功率を重視
大堀先生「新商品を出すときはダイレクトメッセージを出すよりも、しっかりと広告・広報活動を展開するほうが大事。プロジェクト情報が人目につく回数を増やすなどマーケティング要素が強くなってきます。なので、クラウドファンディングのページは商品のランディングページや実際の販売ページだと思ってつくること。その上で、たとえば発売前からメルマガ登録者に“クラウドファンディングページで先着50名さまに20%先行割引します”といった情報を配信しておくとします。すると発売日初日から「申し込み100件!」みたいな展開になり、そのことがまた話題になって広告効果が倍増するというイメージを描いておくといいでしょう。」
クラウドファンディングは事前告知が命!
最後にひとつ、クラウドファンディングにとって重要なことを挙げるなら「事前にプロジェクトを始めることを周知徹底すること。」と断言された大堀先生。逆に最もNGなのは、まわりに何も告げずに準備して、ある日突然「ようやく情報解禁! いよいよプロジェクト始動します!」的なことをSNSで告知することだと指摘します。これは意味がないどころか、プロジェクトにまつわる事前のストーリー展開が見えないことから「この人、いきなり自分のやることに資金援助しろと言い出した」とネガティブに捉えられるリスクさえあります。
「クラウドファンディングは、思い立ったその瞬間にプロジェクトは始まるもの。」そう語る大堀先生は、自分のアイデアや想いがカタチになっていくまでのプロセスを周囲にシェアしていくこと、いかにたくさんの人を巻き込んでいけるかが成功のカギだと言います。
このように、なかなか奥深くて可能性が多義にわたるクラウドファンディングの世界。ひとりではゴールに辿りつけないからこそ、まずは自分のひらめきを気軽にSNSなどで発信してみることが、応援してくれる仲間を増やす最初の一歩になるかもしれません。
構成・文/菅野美和
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