新たなビジネスプラン(事業計画)を参加者同士で競い合う「ビジネスプランコンテスト」は、現在日本各地で開催されています。
たとえ興味はあっても、どのコンテストを受けたらいいのか、自分のアイデアをどう見せればいいのか、悩んでしまう人も多いですよね。
そこで今回は、自身でもビジネスプランコンテストを主催し、長年起業支援に携わってきたICTビジネス研究会の明神ひろし氏を講師に迎え、貴重な主催者側の視点も踏まえて「ビジネスプランコンテスト」について語ってもらいました。
これからコンテストにチャレンジしたい方、コンテストの特徴や審査員から評価されるコツを学びたい方必見のセミナーをレポートします。
講師
ITベンチャー企業の経営を経て、(株)ミロク情報サービスの新規事業の立上げを行い、その後、一般社団法人テレコムサービス協会に所属。地域のビジネス活性化のため、ビジネスアクションクラブ(ICTビジネス研究会)を立上げ、2013年から中小企業やベンチャー企業、学生のアイデアやビジネスを発掘・育成する「Japanビジネスデザインアワード」各地域大会および全国大会を主催。ビジネス人材育成のため「ビジネス実践セミナー・ビジネスワークショップ」の実施。稼げるビジネスモデルにするため、企業や学生へのメンタリング、ビジネス立上げ、販売支援を行っている。
コンテストもビジネスもファンに向けたエンタメ
はじめに、明神氏は「コンテスト=ファンに向けたエンターテインメント」と定義しました。
コンサートなどのエンターテインメントも、ビジネスのひとつです。
中央にパフォーマー、その周りに音響や照明などのスタッフがいますが、最も重要なのは「プロデュースする人」だと明神氏はいいます。
明神氏「プロデューサーが優秀だと、うまく全体を使うことができます。映画も役者の配役がうまいと、うまくいきますよね。最終的にはいかにファンを集めて、売っていくかということになります」
エンターテインメントが成功するためには、
1)ショーの構成を決める
2)役者と役割を決める
3)役者が自分の役割を実行する
という流れが必要になります。
これらがうまくいけば成功、うまくいかなければ失敗というわけです。
このことはコンテストにおいても同様だと明神氏はいいます。
明神氏「経営者は管理職ではなく『経営パフォーマー』として、いかにパフォーマンスをして自分の会社をアピールするかが求められています」
アメリカやヨーロッパといった諸外国では、「いかにパフォーマンスをよくするか」は経営者に求められるスキルのひとつになっているのだそうです。
先述したエンターテインメントが成功するために必要なことをビジネスに当てはめると、以下のようになります。
1)ビジネスモデルを決める
2)部署と役割を決める
3)社員が自分の役割を実行する
プレゼンテーションも同様に、自分に「プレゼンター」としての役割を設定し、みずからその役割を演じることが成功につながっていくのだと明神氏は語りました。
意外と面白いコンテスト参加
次に明神氏は、実際にコンテストの参加、運営、審査員、審査基準の策定などをした経験をもとに、コンテストに参加するうえで意識したいポイントを説明しました。
まず大切なポイントとして挙げられたのは、コンテストには「目的をもって参加する」ということです。
コンテストに参加する場合、以下のような目的が例として挙げられます。
■資金調達がしたい
■交流を通してさまざまな人と知り合いたい
■アライアンスを組む企業を探したい
■商品の売り先を探したい
これらの目的は人によって異なるため、まず一つ、明確な目的を決めることが重要となります。
明神氏「目的を持つと、コンテストの他にマッチメイクイベントや紹介イベント、交流会などの中から『どれに参加するのか』が決まってきます。参加する場所が『コンテスト』であれば、そこには 『評価者(審査員)』や『参加者(企業、傍観者、応援者など)』がおり、また名誉やお金などの『特典』がついてくるのです」
また、ライフワークとして コンテストに参加するのか、名誉のために参加するのかなど、参加する目的によって、それぞれのコンテストの位置づけは変わってきます。
明神氏がこれまでに出会った参加者の中には、賞金を目的に優勝を狙っている人、ビジネスモデルのブラッシュアップを目的とする人、飲み友達を探したい人など、本当にさまざまな人がいたといいます。
さらに、「特典」 によってもコンテストの位置づけは変わってきます。
「特典」は賞金に限らず、たとえばビジネスをスタートまでの教育プログラムが提供されたり、販売先などの紹介があったり、上位コンテストに招待されたりといったものがあるそうです。
明神氏「たとえば資金調達をする場合は、自分たちで資金計画を作らないと事業を取られてしまう可能性もあります。資金を出してくれる方の大半は、大きく分けて2種類。事業が大きくなったらバイアウトで利ざやをもらうか、もしくは上場したら株の売買でバックをもらうか。公的な資金もあるので、そちらに援助してもらうのも良いですね」
このように、「特典」についてもしっかりとした事前のリサーチが必要だということがわかります。
ここで明神氏から、コンテストの評価者とコンセプトについても詳しい解説がありました。
評価者は主に、
■起業家経験者
■勤め人(官庁・企業の部長や課長)
■知識人
の3種類に分けられ、これらを複合的に持っている人が評価者となることが多いそうです。それぞれの経歴や経験によって、評価の仕方に特徴が表れるといいます。
例えば、学校などアカデミー関係の人であれば「理論的にこうであればこうである」という考えを強く持っている傾向があり、勤め人であれば自分の所属先のミッションに当てはまるものを評価する傾向がある、といった特徴を明神氏は挙げていました。
また、コンテストにおいては、その時のコンセプトに当てはまるもの以外は評価されにくい傾向があります。
コンセプトの例として、明神氏は以下の3つを挙げました。
■地方活性化や地方のベンチャー育成を表題とするもの(地方自治体など)
■自社サービスとのアライアンスが見られるもの(一部上場企業など)
■公的機関と民間企業がくっついたもの
上記の通り、コンテストでは評価者の特徴とコンセプトによって評価の基準が変わってくるため、参加する場合は「評価者はだれなのか」、「コンセプトは何か」を事前に確認しておくこと、自分はどこに行きたいのかを分けて考えておくこと、が重要となってくるのです。
ここまで参加者視点からのコンテストについて話をしてきた明神氏ですが、運営側から見たコンテストの仕組みについても解説がありました。
明神氏「コンテストやイベントを開催する側にも、コンセプトと目的が実はあるのです」
明神氏は、「まずは自身のコンセプトや目的を明確にしたうえで、コンテストの運営が示すコンセプトや目的と自身のものが合っているのかを見ていくことが大切」だと話しました。
コンテストにはターゲットや評価基準、アウトプットや特典もそれぞれ設定されています。
これらのポイントを総合的に見ていきながら、自分と合うコンテストを見極めることが大切なのです。
さて、実際にコンテストに参加するとどうなるのでしょうか。
明神氏自身の主催するコンテストに実際に参加した方には、以下のような変化が表れたそうです。
■商品・サービスの問い合わせが増える
■資金調達がスムーズになる
■新聞などメディアに取り上げられる
■就職者が増える(会社の知名度が上がる)
■人とのつながりが広がる
コンテストに参加することがゴールではなく、そこから新しいビジネスにつながっていく可能性があるというお話が印象的でした。
コンテストとベンチャーの評価
では、コンテストで評価されるためには、どのような点が重視されるのでしょうか。
明神氏「コンテストとベンチャーでは評価される基準が違うため、コンテストで評価されるためにはコンテストの評価に合わせていく方が良いかもしれません」
コンテストで評価される点は、組み合わせはいろいろではあるものの、以下の5点にまとめられると明神氏はいいます。
(1)新規性・独自性
他にない独自の新しさ。他社競合と比較した際の圧倒的優位性。
技術やアイデアだけでなく、仕組みや組み合わせ、販売方法の独自性も含まれる。
(2)市場性
販売するターゲット市場を論理的に説明する。
市場規模(お金換算、人数換算)を数字で説明するのが一般的。
パターンは以下の2つに分かれる。
・過去の市場調査から市場を想定する。
・未来の市場にチャレンジし、新しい市場を創造する。
(3)成長性
成長し続ける(利益が上がり続ける)ことを論理的に説明する。
ターゲット層のシフトや新しい連携方法など収益が上がる方法を提示する。
(4)具体性
実現するための具体的な方策や協業について説明する。
資金や技術、販売、利用者などの裏付けがあるか、収益リターン力があるかなど。
(5)ビジネス性
ビジネスモデルとして成り立ち、お金が儲かる仕組みであることを説明する。
一方でベンチャー企業の価値については、分野によって評価されるケースが変わってくるといいます。
①成長分野(宇宙やドローンなど)
いかに市場が増えるのかが評価される。
②衰退分野(鉄鋼業など)
M&Aなどを経て、いかに市場を集約するかが評価される。
③その他の分野
明神氏「結局のところ、評価というのはいくら稼げるのか、儲かるのかというところなのです」
さらに明神氏から、アメリカなどで見られるビジネスモデルの大きな視点で必要とされる観点についても説明がありました。
一般的なビジネスモデルにとおいて必要とされるのは、以下の7点。
1.商品・サービス
2.ターゲット(顧客)
3.市場規模
4.価格
5.販売
6.コスト
7.利益、売上目標
「コンテストではコンセプトによって評価される基準が異なるため、上記のポイントの中でどこを強くアピールし、どこを弱く出すのかを考える必要がある」と明神氏はいいます。
このことも踏まえたうえで、コンテストに参加する際には、「まず目的を決め、そこから内容をよく確認したうえで参加する場を選択し、プレゼン対象者を設定してから資料作成に入る」という流れで戦略を立てるようにアドバイスされていました。
実践プレゼンテーション
セミナーの締めくくりとして、実践的なプレゼンテーションのコツについても明神氏よりお話がありました。
目的を達成するために 効果的なプレゼンテーションを行うには、「しっかりとターゲットを決めてプレゼンテーションするように」と明神氏はいいます。
明神氏「ターゲットを決めてショーをしよう、ということです。自分が資金調達をしたければ、資金調達の人たちに向けてターゲットを決めてプレゼンテーションをします。『誰』に向けて『何がしたいか』です」
また、「プレゼンテーションの内容は相手が知っていることを7割、知らないことを3割に構成するといい」という具体的なアドバイスも。
明神氏「プレゼンテーションというのは、最初のインパクト が大事。『自分たちはこうしたいんだ』ということや、『おぉ!すごい!』というものを最初に持ってくる。そのあとがたいしたことがなくても、良いという印象は長く続きます。プレゼンテーションは最初にインパクトを持ってくるようにしてみてください。」
その後、参加者の皆さんからの質問に一つずつ回答し、今回のセミナーは終了しました。
最後は明神氏より「みなさんも人生のひとつの糧として、趣味としてビジネスをしてもらえるといいかなと思います。自分にいかに楽しめるのか。ぜひビジネスも人生のひとつとして楽しんでください」というエールをいただきました。
構成・文/やまぐちきよみ
<おすすめ記事>
\イベントをチェックしたい方はこちら/