マイナンバーカードや電子インボイス…日本のDXに挑む! 「日本のDXがどう進んでいくかを見越して動けるのが私たちの強み」
「もともと学生時代は税理士を目指していたんです。実はあと1科目を残しているだけなので近いうちに税理士の資格も取得する予定です」と語る山下誠路さん。
税知識のエキスパートが起業家として勝機を見出したのは「電子契約」事業だった。
山下 誠路氏(株式会社TREASURY 代表取締役)
1976年愛媛県生まれ。大学卒業後、大学院に進学。同時に法律会計事務所で働きながら、税理士の資格取得を目指す。2003年に上場会社に転職。商品本部長、システム本部長、常務取締役までを歴任。起業を見据え弁護士事務所での経験を経て2016年にTREASURYを設立。(撮影:蔦野裕)
マイナンバーカードやインボイス、電子帳簿といったワードが世間一般で取り沙汰されるよりも以前の2016年、電子契約に大きな可能性を見出しTREASURYを立ち上げた山下さん。
山下氏「それまでは上場企業でシステム担当の役員をやっておりまして、起業するならIT分野、それもシステム会社でないと自分は生き残れないと感じていました。
あるとき、IT系のエキスポで“電子契約”に興味を持ち、調べたところGoogle検索で“電子契約”というワードが前年比で600%上がっているというので、つまり今後伸びていく市場だと思い、電子契約で事業をやっていこうと思いました。
当時、競合になりそうなサービスをいろいろ調べたのですが、あまり自分が使いたいというサービスが無く、チャンスを感じて参入しました」
2020年1月にはクラウド型の電子契約サービス「Great Sign」をリリース。
山下氏「煩雑な契約書締結業務をオンライン上の管理画面を介して行うクラウド型電子契約システムです。以前にも他社さんから同種のサービスは出ていたんですが、当時はまだ“紙のほうがいい”とか“電子は不安”といった声が大きかった。
私たちの場合は、いろいろな問題が一通り出尽くして、やっぱり電子を進めていこうという流れになってきたちょうど良いタイミングでリリースできました。また近年、電子契約に関する法整備も進んでいます。
先日は、経済産業省の「グレーゾーン解消制度」を活用し、クラウド型電子契約サービス「Great Sign」が、国及び地方公共団体との間で締結する契約の電子化に必要な電子署名の要件を満たしていることを確認しました。
私たちはいち早く行政や専門家など電子契約分野の第一人者とつながってきたので、今後日本のDXがどう進んでいくかを見越したうえでサービス、製品開発ができるのも我々の強みです。
また弊社のサービスでは利用者がそういった専門家に弊社を介して電話やメールで相談することも可能です」
差別化できるサービスや強み、市場の可能性など、起業に必要な視点を備えていた山下さんだが、学生時代は起業を意識したことはなく税理士や会計士を目指していたという。
山下氏「実家が寿司屋で自営業だったので、いつか独立したいとは思っていましたけど具体的に会社を作るというイメージは無かったんです。
でも上場企業での経験で、上場を目指す会社を立ち上げたいという気持ちが芽生えた。その根底にあるのは、ただ売上を立てたいということではなく、社会に貢献できる仕事がしたいということ。
誰もが安心して使えるインフラとなるサービスを作って、日本のDXに貢献したいという思いがあるんです」
グローバル市場も最初から見据えているという。
山下氏「日本は少子化問題もあり、今後、日本だけを市場とするビジネスはどうしても不安があります。システムであれば在庫を抱えることなくグローバル展開を目指していけるので、早くからその体制を整えています。
システム開発スタッフは海外対応ができる人をそろえており、現在全員が外国人スタッフとなっています」
そんな山下さんだけに、日本のDX化の大きな遅れを感じるという。
山下氏「例えば現在、マイナンバーカードの是非がいわれてますけどこれはもう、国民に持たせていくという方向で進むと思います。実際のところ、もうすでに運転免許証よりマイナンバーカードのほうが申請数や発行枚数は多くなっているんです。
運転免許証や保険証と一体化させるといわれると日本だと不安に思う人も多いですが、海外、例えばシンガポールではスマホに国民IDが格納されていて、納税をはじめさまざまな行政サービスがスマホで利用できるんです」
TREASURYでは、金融や不動産取引などにおいてオンライン上での本人確認業務ができるSaaS型サービスも手がけており、マイナンバー関連業務にも携わる。
山下氏「マイナンバーカードについては、よく個人情報漏洩が心配されてますよね。でも政府はすでにそれらの個人情報を持っていますしB to Bでどこかの事業者に作業発注したとしてもそのデータは暗号化されています。
さらにICチップを読み込まれたとしても、そこには必要最小限の情報のみ記録されており、プライバシー性の高い情報は記録されません。
また、不正に情報を盗取しようとする各種手法に対し、記録情報の暗号化など、対抗措置も施されています」
電子契約や電子帳簿…デジタル化は進んでいく。
山下氏「専門家の方から企業の経理課担当や自営業などの一般の方まで、デジタル化で改善できることはいろいろあると思います。
例えばインボイス制度が始まりましたが、今はまだ税理士の先生が自分で記帳したり領収書をもらったりアナログな作業をしていることも多く、先生がしなくてもいい作業が増えたケースも多いのではないでしょうか。
また税制をはじめいろいろな制度は年々改正されますが、それを一般消費者がすべて把握するのは難しい。でも我々のサービスでは今後、電子帳簿保存法が改正されたとしても随時、それに適応させた形で提供できます。
行政や専門家とつながり日本や世界のDXの状況を予測し、いち早くサービスに反映させると同時に、ユーザーの方々が身につけたいリテラシーを高めるサポートもしていきたいと思っています」
山下誠路さんの起業家年表&「その時の1冊」
【1976年】愛媛県に生まれる。実家は寿司店を経営。小学生から大学時代まで野球に打ち込む
【1999年】 大学卒業後、大学院に進学。法律会計事務所で働きながら税理士取得を目指す
【2003年】 東証1部上場企業に転職 常務取締役などを歴任
【2014年】 同企業を退任
【2015年】 IT分野での起業を意識し、弁護士事務所に在籍。会計責任者やweb広告責任者を担当。そのころ、ITエキスポで電子契約を扱う展示を見てビジネスの可能性を感じる
【2016年】 株式会社TREASURY(トレジャリー)を設立
【2020年1月】電子契約サービス「Great Sign(グレート・サイン)」をリリース
【2023年】 保険コンサルティング事業を開始
『論語』
論語を学ぶことで、個人としても組織としても大切な事をたくさん学ばせていただきました。ビジネスを行う上での基本的な考え方を学ぶことができ、起業に大いに役立っています。
『成功哲学』
(ナポレオン・ヒル 著 新装版:きこ書房)
成功への原理原則を学ぶことができ、人はいつからでも、どこからでもよくなれるということと、そして「何が何でも」手に入れたいという強い想い、燃えるような願望がすべての出発点となるということを学ぶことができました。
『マネジメント』
(ピーター・F・ドラッカー 著 エッセンシャル版:ダイヤモンド社)
マネジメントは目的ではなく、目標を達成し成果を上げるための手段であることを学び、どんな困難な状況になっても目標を達成し成果を上げることの重要性を学ばせていただきました。
変化する経済環境に対応し、安心できる未来を提供
電子署名法に精通した弁護士や税理士など専門家チームと連携し、電子署名法や電子帳簿保存法等のコンサルティングおよびITサービスを展開。クラウド型電子契約サービス「Great Sign」や本人確認をオンラインで完結できる「Great eKYC」を提供。関連法案にも準拠した安心・安全性の高いサービスを手掛け、マイナンバー関連業務にも携わっている。他、不動産事業、人材事業、海外人材育成事業なども展開。
株式会社TREASURY
【URL】https://treasury.jp
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